研究課題/領域番号 |
19K21700
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
岸本 太一 東京理科大学, 経営学研究科技術経営専攻, 講師 (70508556)
|
研究分担者 |
岸 保行 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (50454088)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 文化製品 / 国際展開 / 大衆品化 / ワイン / 日本酒 / 形式知化 / ローカル適合 |
研究実績の概要 |
本研究では「日本市場におけるワインの大衆品化」を事例研究の主な題材として活用し「文化製品の国際普及メカニズムの全体像」を大まかに描写することを、最終目的としている。そして、その結果を、短編論文に留まらずに、著書化することを目指しており、この点を上述の目的と共に、挑戦的研究としての意義の一つに掲げている。 本課題の当初の計画では、昨年度が最終年度となる予定であった。しかし、COVID-19の流行による遅延の影響があり、昨年度に延長を申請し、更に本年度も再延長を申請した。以上の関連で、本年度も中間作業という位置づけで調査と研究を実施した。 本年度は、フィールドワークの実施およびそのための準備に最も時間を注ぎ、活動を行なった。フィールドワークを、特に海外調査を実施できたことは、本課題の研究を進める上では極めて大きい。主要な研究方法として研究計画調書に明記していたにもかかわらず、昨年度までは十分に実施することができず、海外調査に至っては一度も実施できていなかったからである。 以上のような状況の中、本年度はフランスと国内の新潟において、2度のフィールドワークを実施することができた。フランスにおいては、2023年3月8日から18日にかけて、ワインの世界的な産業集積であるシャンパーニュ地域とブルゴーニュ地域を訪問し、ワインの生産者やワインの日本輸出を支援する様々なプレイヤーに対して、現場見学とインタビューを行った。新潟においては、2022年6月8日から10日にかけて、日本酒関連の商社や製造設備メーカー等に対して、現場見学とインタビューを行った。 他方調査成果の論文化や公表も、サブという位置づけで実施した。例えば、学会発表に関しては「国際ビジネス研究学会 第29回全国大会」において「伝統産業における形式知化の方向性と国際展開 日本酒産業とワイン産業の比較分析」というタイトルで発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「やや遅れている」を選択した最大の理由は、フィールドワークの予期せぬ延期にある。 「研究実績の概要」の欄で記載したように、今年度は数年前から計画していたフィールドワークを、大型の海外調査を含め、2つ実施することができた。しかし、どちらの調査も当初の計画では、新潟調査は2022年の3月に、フランス調査に至っては2020年の3月に実施する予定であった調査であり、本年度が始まる前に既に完了している予定の調査であった。(なお、両調査の計画と延期に関しては、過去の実施状況報告書に記載してあるので、そちらも参照して頂きたい。) 本研究課題は、フィールドワークを最大の事実収集源に位置づけて、研究計画を立てた課題となる。それゆえに、訪問調査実施の延期は、成果報告の面にも、その進捗に少なからず影響を及ぼすこととなった。特にフランス調査に関しては、実施時期が年度末となる2023年の3月であったため、研究の進展に繋がる新たな情報を豊富に収集できた一方で、収集した情報を活用した分析や考察については、本年度中には実施することができなかった。 研究計画調書に記載した当初の計画では、本年度には「①:海外ジャーナル向けの論文の作成」および「②:最終成果物となる著書の作成」を行う予定であった。しかし、現時点においては、①と②のどちらに関しても、上述したフィールドワークの実施時期の影響等で、作成を完了することはできていない。 ただし、作成を全く行えなかったわけではない。①の方は、フランス調査以外の調査結果を基に、論文の一部となるコンテンツの作成を進めることができている。②についても、著書の一部となる成果は着実に増えており、また、著書の章立て案に関しても、昨年度構築したものを追加修正し、精緻化を行なった。 以上を踏まえ、現在までの進捗状況を「やや遅れている」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の方針については、事実調査面と成果公表面に分けて記述する。 事実調査面に関しては、下記の2点の試みを考えている。 1点目は「延期したフィールドワークを次年度の調査に追加する」という試みである。本研究には「研究実績の概要」で記載した新潟調査とフランス調査以外にも、本年度までに実施を計画していたが、まだ実施のできていない訪問調査が、複数存在する。したがって、次年度においてはそれらの調査を、可能な限り実施することを試みる。 2点目は「フィールドワーク以外の調査方法に切り替える」という試みである。フィールドワークに関しては、フランス調査等の費用が円安や物価上昇などの影響により増額した結果、研究費の残額が大幅に減少し、研究計画調書に記載した調査の全てを実施できない状況となった。より具体的に言えば、二つの大型海外調査(チリ調査とイタリア・スペイン調査)については、実施できない可能性が極めて高い。以上の関係から、調査の一部に関しては、オンラインによるインタビュー調査や文献調査に切り替えたいと考えている。 成果公表面に関しては、「今年度の提出を予定していたが、提出できなかった成果物」を、できうる限り公表していきたいと考えている。具体的には「最終成果物となる著書の出版」および「海外ジャーナルへの論文の投稿」を達成したいと考えている。 しかし、上述したように、本研究においては、事実調査の面で大幅な遅延が生じており、また、次年度の調査においても、予算の関係で次善の代替手段へと変更せざるを得ない調査が、発生する見込みである。したがって、仮に事実収集が不十分になってしまった場合は、例えば、公表媒体を海外ジャーナルや著書から学会発表や報告書等へと変更することを余儀なくされる可能性はある。そういった変更を考慮にいれつつ、構築した研究蓄積を最大限に活かせる公表方法を選択していきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、「研究実績の概要」、「現在までの進捗状況」および「今後の研究の推進方針」の項に記載した、フィールドワークの予期せぬ延期にある。これらの関係で、本年度までに使用する予定であった旅費、通訳等の依頼にかかる人件費、ヒヤリングデータのテープ起こし外注費などの出費に、大幅な変更が生じ、次年度使用額が発生した。 次年度使用額の用途候補としては、主に次の三つを考えている。一つ目は「本年度に行ったフランス調査の結果を整理するための費用」である。同調査は、本年度末である2023年の3月に実施した。ゆえに、ヒヤリングデータのテープ起こしの外注等については、まだ実施できていない。二つ目は「訪問調査を実施した際の費用」である。今年度までに実施できなかった訪問調査の多くは、中止ではなく延期となっている。したがって、その一部を予算の許す範囲内で実施する可能性が高い。三つ目は「オンライン・インタビューの実施のための費用」である。こちらの方法に関しては、訪問調査の次善策として検討しているが、オンラインで実施する場合にも、通訳の手配や機器の整備等が必要となる可能性がある。以上の三つを主要な用途の候補とする形で、次年度使用額の使用を計画している。
|