研究課題
本研究は、地球温暖化問題に代表される超長期の問題に対する我々の利他的選好について、脳科学、認知科学、徳倫理学、哲学、経済学からの学際的考察を行うことを通じて、伝統的に効用の無限流列への選好として表現されてきた経済動学モデルの効用関数に代わる新たな効用関数を提案することを課題としている。計画時点での重点事項として、世代間利他主義と世代内利他主義の違いを明らかにすること、地球温暖化問題の経済学への含意を得ることを挙げている。以上の課題に対して、昨年度に引き続き研究会の開催を通じて検討を加えてきた。本年度は、これまでの研究を補強し今後の研究展開を構想することを意図して研究を進めた。第1に、世代間利他主義を世代内利他主義と区別する顕著な特徴である、われわれは将来世代と直接知り合うことができないという点を補強する研究を進めた。社会心理学の共感―利他性仮説を基礎として、どのようなメディアを通じてわれわれが将来世代に共感できるかを実証的に検討した。また、今後の研究の展開を意図して、将来から現在を考える視点を得ることを目的とするフューチャーデザインの研究動向を調査した。第2に、Rawls-Harsanyi-Binmoreアプローチを、選好と道徳の2心性仮説と位置付け、Boehm (2012)の道徳の起源に関する進化的理解によって正当化することを試みた。この2分法によって、道徳を独立に論じることができる。その具体的応用として、国連気候変動枠組条約パリ協定の1.5℃目標の背後にある気候変動問題に関する世代間衡平の道徳が、強い持続可能性であることを指摘し、ロールズの無知のベールからそれが選ばれることを論考した。
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