研究課題/領域番号 |
19K21713
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
安達 潤 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (70344538)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | ICF(国際生活機能分類) / 発達障害 / 多領域連携・多職種連携 / 社会実装 / クラウドシステム |
研究実績の概要 |
2019年度の研究実績は、以下、3点である。 (1)現ICF情報把握・共有システムの運用上の問題点把握:AMED研究での開発システムをより廉価なDropbox版に移行したシステムを実践現場で試行した。結果、Dropbox版の改修箇所が把握され、改修完了している。一方、一般的な使い勝手には課題があり、ネットやパソコンの設定・操作に係る一定程度の知識を要する。 (2)ASD・ADHDコアセットのシステム導入: ASD (Bolte et al. , 2019)とADHD(Bolte et al. , 2018)のコアセット版の活動と参加項目・環境因子項目の各論理和をとって、a)0-5歳、b)6-16歳、c)17歳以上の3年齢帯の発達障害ICFコアセット仮項目版を作成。さらに身体構造・心身機能項目から現場で観察可能かつ障害特性把握の重要項目を抽出し、活動と参加の仮項目版に統合して検討第二版を作成。最後に、検討第二版項目の要不要および除外項目の再採用について発達障害専門の児童精神科医1名と協議し、実践試行版を作成した。活動と参加および環境因子シートの各年齢帯の項目数は、0-5歳版)54項目と38項目、6-16歳版)66項目と40項目、17歳以上版)73項目と43項目である。コアセット版の項目数は半減し、情報把握労力の大幅な軽減が期待できる。 (3)ASD・ADHDコアセット版の項目表現わかりやすさ調査:発達障害支援の実践支援者、発達障害児の保護者など約40名を調査協力者として、実践試行版の3年齢帯の論理和を取った項目について、活動と参加シートでは見出し説明や項目説明でわかりづらい表現のチェック、環境因子シートでは説明文書をわかりやすく改訂した新版と旧版の比較検討を行った。現在、得られた結果を両シートに反映する作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ASD・ADHDのICFコアセットを導入した活動と参加シートおよび環境因子シートは既に実践での試行が可能な状態で作成されており、この点、計画よりも進展している。また、当該シートのわかりやすさ調査も調査が完了し、結果を、現改訂作業に反映させている点も、計画よりも進展している。その他の点では、計画通りの進行となっている。 現場での試行実践については、2019年度は予定していた地域に2020年度以降の実施に向けた準備を依頼するに留まっている。2020年度以降の実践試行が今後の課題である。但し、コロナウイルス感染拡大のため、先行きに不透明な部分もある。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度に開発したICF発達障害コアセット版を全国数カ所の支援現場で実践試行し、活用上の課題に加えて、より効率的・効果的な活用方法を検討していく。方法としては、小規模CBPRの手法を採り、研究代表者が実践地域に赴き(あるいは遠隔で参加し)、情報把握・把握情報による支援会議資料の作成・支援会議に部分的に携わる形で、支援現場の自立性・自律性を担保しながら、ICF発達障害コアセットの活用効果を検討し、必要な改訂を進めていく。さらに、システムの活用方法についても情報を収集し、まとめていく。クラウドシステムについては、Dropbox版に加えて、支援機関内部のネット使用ルールによってDropboxが使用できない場合を考慮し、エクセル版の開発を外部委託することを計画している。エクセル版の詳細は、現時点で検討中であるが、協力支援機関を中心とする小規模な多職種連携・多領域連携ネットワークの中でのファイル共有(PWを付した上での添付送信等を含む)で活用できるような機能装備を図る。 2021年度は2020年度までの結果をまとめて、マニュアルの作成などに取り組むことを予定している。但し、コロナウイルス感染拡大のため、支援実践が通常の形で動かない場合も予想され、先行きに不透明な部分もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は。ICF発達障害コアセットの開発および活動と参加シートと環境因子シートのわかりやすさ調査に注力したことから、全国の支援現場での実践試行実施数が少なくなったため、旅費の支出が下がった。併せて、2020年度以降、ICF情報把握・共有システムのエクセル版を開発する必要性が生じたため、その開発費に充当することを念頭に、2019年度の助成金を2020年度に繰り越すこととした。 2020年度は全国の支援現場に赴いて、ICFシステムの実践試行を展開することを予定しているが、コロナウイルス感染拡大状況のために支援現場が通常通り動かない可能性もあり、先行きが多少、不透明となっている。
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