研究課題/領域番号 |
19K21719
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大石 亜希子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (20415821)
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研究分担者 |
川口 遼 首都大学東京, 人文科学研究科, 特任研究員 (20795942)
末冨 芳 日本大学, 文理学部, 教授 (40363296)
阿部 彩 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (60415817)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 貧困 / ジェンダー / 高校生 / アルバイト / 労働 |
研究実績の概要 |
本研究では公的統計調査の個票や東京都が実施した調査の個票データを使用し、社会経済的格差とジェンダー格差に着目しつつ(1)高校生のアルバイト就労の決定要因を探索し(2)生活時間配分の同時性を考慮しつつ就労と勉強時間、睡眠時間の関係を把握するとともに(3)アルバイト就労が中退や進学あるいは就職に及ぼす影響を把握し、教育政策や子供貧困対策への示唆を得ることを目的としている。今年度の研究実績は以下の通りである。 (1)東京都調査に基づく分析を進めるため、地域の雇用情勢とマッチングさせるためのデータ整備を行った。予備的な分析の結果としては、全体として女子生徒の方がアルバイトを行なっている割合が有意に高く、また男女差は世帯の経済状態が悪いほど大きくなることが明らかになった。 (2)同じく東京都調査を用いて、祖父母世代から継続する貧困と、親世代からの「新しい」貧困の違いを検証し、祖父母の貧困の影響が(親世代の貧困をコントロールしても)確認できる貧困の側面(うつ傾向)、確認できない側面(学力)があることを立証した。すなわち、一口に「貧困の世代間連鎖」と言われる事象においても、世代間連鎖の度合いはアウトカムによって異なり、どのアウトカムにアプローチするのかによって対策が異なることが明らかになった。 (3)日本の高校生労働者の支援機能もある学校内居場所カフェに関するフィールドワークを実施した(2018年11月~2019年6月)結果に基づき分析を行い、高校生の労働ルールが雇用者によって守られていない実態、発達課題のある高校生のアルバイト就労困難など、日本の高校生をとりまく雇用状況の実態を把握した。 (4)各種の社会調査の比較を通じて、「高校生アルバイト」の定義の違いや、平日と週末の扱いの差について整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が所属機関の部門運営の一部を2019年4月から担うようになり時間的制約が強まったことに加え、2020年に入ってCOVID-19感染拡大により、地方自治体でのヒアリング調査が困難になったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
高校生アルバイト就労の決定要因の分析、およびアルバイト就労とアウトカムの関係については、引き続き東京都調査で分析を行うことに加えて、官庁統計の目的外使用申請の手続きがCOVID-19の拡大に伴う緊急事態宣言によって遅れていることから、東大社研の高校生パネルデータを用いて補完的に分析を行う。貧困の実態把握については引き続き世代間連鎖に着目した研究を進める。当事者ニーズの把握と支援策に関しては、足元での学校閉鎖や経済活動の縮小により、高校生を含む子供たちの生活状況が悪化していることを踏まえ、現状把握と関連団体からの情報取得に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では社会調査を用いた数量分析に加えて自治体や教育行政関係者へのヒアリング調査を実施する予定であったが、COVID-19感染拡大に伴いスケジュール調整と出張が困難になった。 令和2年度以降に国内調査が可能となり次第、旅費およびヒアリング調査内容のテープ起こし等、分析にかかわる費用として使用する予定である。
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備考 |
<ワーキングペーパー> 阿部彩(2020)「祖父母世代の貧困が孫に及ぼす影響」子ども・若者貧困研究センターWorking Paper No.6 <研究会報告> ①川口遼(2020)「高校生のアルバイトの探索的研究ージェンダーと貧困の視点から」本研究課題第1回研究会、2020年2月17日 ②大石亜希子(2020)"Student Employment in Japan"①と同
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