研究実績の概要 |
期間を1年間延長した最終年度では、引き続き昨年度から続く双葉調査自由記述の匿名化作業をおこなった。データの寄託先である東京大学社会科学研究所データアーカイブセンターの協力のもと、福島大学行政政策学類とともに、自由回答における個人情報保護と匿名化加工の基本方針について確認しつつ、データアーカイブセンター・福大・研究実施者の3者間でデータクリーニング作業の最終確認を終えた。研究実施期間中のデータ公開はかなわなかったものの、すでにデータはアーカイブセンターの管轄下にあり、残るは公開にあたってのセンターによる確認作業のみとなった。 本研究は、大規模社会調査の回収済み調査票において、通常のコードデータ分析では分析対象とならない自由記述や欄外記入文の重要性に着目し、調査データとしての整備・記録および再分析手法の開発を探求する探索的研究として始められた。具体的には、2011年に福島大学が実施した「双葉地方の住民を対象とした災害復興基本調査」の回収調査票原票を対象に、調査票原票それ自体を被災者の現実を記録した史料として保存する試みである。 本研究のもっとも大きな実績としては、1.双葉調査の調査票原本13,600票のデジタル化によるアーカイブ作業、2.自由記述文のデジタル化と個人情報保護にもとづいた匿名加工作業、3.原票PDFを含めた電子データのデータアーカイブセンターへの寄託が挙げられる。 コードデータのデータ寄託は数多いが、質的調査のデータ寄託はまだ事例が少なく、社会学全体をみても端緒についたばかりである。こうした状況のなか、本研究では、コンプライアンスと研究倫理に従って原資料のアーカイブ化を進めることができた。双葉地方の人々の、震災原発事故当時の声を記録し、次世代へと継承するための土台を作成したことが本研究のもっとも大きな実績となる。
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