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2019 年度 実施状況報告書

ボランティア参加を促すものは何か:フィールド実験による因果関係の推定

研究課題

研究課題/領域番号 19K21723
研究機関愛媛大学

研究代表者

青木 理奈  愛媛大学, 法文学部, 助手 (50838638)

研究分担者 福井 秀樹  愛媛大学, 法文学部, 教授 (00304642)
小佐井 良太  愛媛大学, 法文学部, 教授 (20432841)
石坂 晋哉  愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20525068)
胡 光  愛媛大学, 法文学部, 教授 (50612644)
鈴木 静  愛媛大学, 法文学部, 教授 (80335885)
研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2022-03-31
キーワードボランティア / 大学生 / 参加動機 / フィールド実験 / 因果推定
研究実績の概要

2019年度の研究の実績は、以下の通りである。
第一に、フィールド実験の対象となる愛媛大学の学生をボランティア活動へと向かわせる動機をあらかじめ一定程度、把握するために、半構造化インタビューによる質的調査(3件)を行った。同時に、ボランティア活動の継続・活性化はどのように図られているのかを把握するために、国際災害ボランティアとして長年、活動を継続されている吉椿雅道氏を招き、インタビューを行った(一般公開講演会も開催)。これらのインタビューから得られた成果を青木、小佐井、鈴木は研究会「ボランティアの参加を促すものは何か」にてそれぞれ報告し、かつ、3名による共著で研究ノートとしてまとめ公表した。
第二に、より多くの学生のボランティア活動動機を把握するために、愛媛大学法文学部を拠点に行われている歴史資料修復ボランティアについて、アンケート調査(2回)を行った。このアンケート調査から得られた成果を胡は研究会「ボランティアの参加を促すものは何か」にて報告した。
第三に、半構造化インタビューによる質的調査から得られた知見を反映させつつ、ファーマーズマーケット運営ボランティア募集実験(2回)と福岡正信自然農園稲刈り作業支援ボランティア募集実験(1回)を行った。これらのフィールド実験から得られた成果を青木、福井、石坂は研究会「ボランティアの参加を促すものは何か」にて報告し、かつ、3名による共著で論文を作成中である(2020年度に学会報告する予定)。なお、アンケート調査から得られた知見を活用した歴史資料修復ボランティア募集フィールド実験も実施する予定であったが、「7.現在までの進捗状況」で述べるやむを得ない事情により、中止となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

インタビューによる質的調査及びアンケート調査は、予定通りに実施することができた。しかし、ボランティア募集フィールド実験は、当初の想定通りに進めることができなかった。具体的には、愛媛大学が新型コロナウイルス対策のために学生の課外活動の自粛を要請したため、年度末に予定していたボランティア募集フィールド実験が実施延期となった。そのため、研究の進捗は、当初の想定に比してやや遅れ気味である。

今後の研究の推進方策

本研究では、フィールド実験を通じて、ボランティア活動への学生の関与をより強く促すインセンティブの解明を試みている。先行研究では、金銭的インセンティブの役割について結論の一致が得られていない。即ち、金銭的インセンティブはボランティア活動への関与を促進すると結論づける研究もあれば、逆に、金銭的インセンティブはそのクラウンディングアウト効果によりむしろボランティア活動への関与を阻害すると結論づける研究もある。これらに対し、本研究のフィールド実験では、3回全てにおいて金銭的インセンティブ・メッセージの影響と他者への貢献を強調するそれの影響との間に統計的有意差はない、という結論が得られた。
本研究のフィールド実験は、先行研究と比べて、(1) 無作為抽出がより厳密に行われ、(2) ボランティア活動への「謝礼」としての金銭的インセンティブが不当に安価な「労働の対価」と見なされないよう工夫が施され、かつ、(3) 大学教員による観察者効果の緩和も図られている。本研究のこれまでの結果は、このような工夫を施した場合でも、金銭的インセンティブのクラウンディングアウト効果が観察されうることを示唆しているかのように思われる。もっとも残念ながら、3回の実験いずれにおいても応募者数が伸びなかったため、十分な検定力が得られなかった。これが2019年度のフィールド実験の限界である。
今後の実験では、検定力改善のために母集団拡大を試みた上で、「謝礼」としての金銭的インセンティブを受ける処置群だけでなく、「労働の対価」としての金銭的インセンティブを受ける処置群も設けるといった工夫により、金銭的インセンティブのクラウンディングアウト効果をさらに検証する。
また、新型コロナウイルス対策のために実験が予定通りに実施できない可能性も考慮し、聞取り調査及びアンケート調査を継続し、それらの統計的分析を実施することも考えている。

次年度使用額が生じた理由

第一に、研究代表者が産休になり、数ヶ月間執行できない時期があった。既に復帰しているため次年度は計画的に執行していく。
第二に、コロナウイルスの影響により、3月以降の出張が全てキャンセルになったため、執行できなくなった。これらは次年度以降も予想ができないため、当初の計画を変更していく必要がある。
第三に、上記のように、コロナウイルスの影響によりボランティア募集フィールド実験が十分に実施できない可能性がある。そこで、インタビュー調査及びアンケート調査を継続し、データの蓄積を図りつつ、質的データ分析も行う。そのためのソフトウェアの導入も計画している。

  • 研究成果

    (39件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件) 図書 (7件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 学生ボランティア組織の現状と課題2020

    • 著者名/発表者名
      青木理奈・小佐井良太・鈴木靜
    • 雑誌名

      愛媛大学法文学部論集社会科学編

      巻: 48 ページ: 1-28

  • [雑誌論文] How do passengers react to airlines’ overbooking strategies? Evidence from the US airlines2020

    • 著者名/発表者名
      Hideki Fukui & Koki Nagata
    • 雑誌名

      Transportation Research Part A: Policy and Practice

      巻: 132 ページ: 242-255

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.tra.2019.11.001

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 高校修学と生活保護―福島市給付型奨学金収入認定訴訟に焦点を当てて―2020

    • 著者名/発表者名
      鈴木靜・上山直人
    • 雑誌名

      愛媛法学会雑誌

      巻: 46(1・2合併号) ページ: 81-99

  • [雑誌論文] 政策分析を通じた評価手法――航空行政を中心に――2019

    • 著者名/発表者名
      福井秀樹
    • 雑誌名

      評価クォータリ

      巻: 51 ページ: 16-37

  • [雑誌論文] 空港発着枠規制の解除は航空運賃にどのような効果を及ぼすのか? 米国ニューアーク空港発着枠規制解除の分析2019

    • 著者名/発表者名
      福井秀樹
    • 雑誌名

      Nextcom

      巻: 39 ページ: 4-15

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 西日本豪雨における愛媛県の資料保全活動2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 雑誌名

      愛媛県神社庁報

      巻: 595 ページ: 5~6

  • [雑誌論文] 本山寺の開帳2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 雑誌名

      へんろ

      巻: 422 ページ: 5

  • [雑誌論文] 山車という方言2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 雑誌名

      松山道前会

      巻: 19 ページ: 6

  • [雑誌論文] 国連・第10回高齢化に関するワーキンググループ会議報告2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木靜
    • 雑誌名

      第10回国連高齢化に関する会議参加報告書

      巻: 12 ページ: 5-10

  • [学会発表] 学生ボランティア組織聞取りの分析視覚と先行研究2020

    • 著者名/発表者名
      青木理奈
    • 学会等名
      「ボランティアの参加を促すものは何か」科研研究会
  • [学会発表] ボランティア募集試行実験の結果について2020

    • 著者名/発表者名
      福井秀樹
    • 学会等名
      「ボランティアの参加を促すものは何か」科研研究会
  • [学会発表] 学生ボランティア組織聞取りと考察:今後の研究に向けて2020

    • 著者名/発表者名
      小佐井良太
    • 学会等名
      「ボランティアの参加を促すものは何か」科研研究会
  • [学会発表] ボランティアの利己的動機について2020

    • 著者名/発表者名
      石坂晋哉
    • 学会等名
      「ボランティアの参加を促すものは何か」科研研究会
  • [学会発表] 歴史資料修復ボランティアに関するアンケート結果2020

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      「ボランティアの参加を促すものは何か」科研研究会
  • [学会発表] 西日本豪雨が歴史資料を襲う(ポスターセッション)2020

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      全国史料ネット研究交流集会
  • [学会発表] 四国遍路の価値と世界文化遺産登録に向けた課題2020

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      「四国遍路を世界遺産に」国際シンポジウム
    • 国際学会
  • [学会発表] 学生ボランティア組織への支援(吉椿雅道氏講演会の実施)について2020

    • 著者名/発表者名
      鈴木靜
    • 学会等名
      「ボランティアの参加を促すものは何か」科研研究会
  • [学会発表] Slot hoarding: do carriers deliberately underutilize scarce resources at congested airports?2019

    • 著者名/発表者名
      Hideki Fukui
    • 学会等名
      Annual Conference of the International Transportation Economics Association
    • 国際学会
  • [学会発表] Slot hoarding: do carriers deliberately underutilize scarce resources at congested airports?2019

    • 著者名/発表者名
      Hideki Fukui
    • 学会等名
      Air Transport Research Society 23rd World Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Quest for a Non-exclusive Politics2019

    • 著者名/発表者名
      Shinya Ishizaka
    • 学会等名
      International Convention of Asia Scholars 11
    • 国際学会
  • [学会発表] Glocalization of Natural Farming2019

    • 著者名/発表者名
      Shinya Ishizaka
    • 学会等名
      48th Annual Conference on South Asia, Madison
    • 国際学会
  • [学会発表] 松尾芭蕉の時代の旅人たち2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      文系研究センター開設記念合同シンポジウム
  • [学会発表] 大洲八幡神社文書と祭礼の歴史的意義2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      大洲八幡神社祭礼調査報告会
    • 招待講演
  • [学会発表] 美術工芸品をはじめとする動産文化財の調査とレスキュー2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      日本建築士会
    • 招待講演
  • [学会発表] 讃岐の洋学2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      種痘研究会
  • [学会発表] 西日本豪雨における愛媛県の資料保全活動2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      西日本大学協議会
  • [学会発表] 愛媛県における資料保全活動の成果と課題2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      歴史資料ネットワーク総会
  • [学会発表] 明治維新と四国遍路2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      巡礼遍路研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 国府叢書の歴史的背景2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      今治史談会
  • [学会発表] 四国遍路から見た明治150年2019

    • 著者名/発表者名
      胡光
    • 学会等名
      西南四国歴史文化研究会
    • 招待講演
  • [図書] Natural Farming Today 22020

    • 著者名/発表者名
      石坂晋哉
    • 総ページ数
      26
    • 出版者
      愛媛大学リサーチユニット「グローカル地域研究」
  • [図書] 愛媛県歴史文化博物館2020

    • 著者名/発表者名
      胡光・大本敬久他
    • 総ページ数
      136
    • 出版者
      四国・愛媛の災害史と文化財レスキュー
  • [図書] 勉誠出版2019

    • 著者名/発表者名
      胡光・佐藤孝之・三村昌司他
    • 総ページ数
      338
    • 出版者
      近世・近現代文書の保存・管理の歴史
    • ISBN
      9784585222538
  • [図書] 岩田書院2019

    • 著者名/発表者名
      胡光・橋詰茂他
    • 総ページ数
      515
    • 出版者
      戦国・近世初期西と東の地域社会
    • ISBN
      9784866020747
  • [図書] 大洲市教育委員会2019

    • 著者名/発表者名
      胡光・大本敬久・高嶋賢二他
    • 総ページ数
      280
    • 出版者
      大洲八幡神社祭礼総合調査報告書
  • [図書] 人生100年時代の社会保障と高齢者の人権確立を目指して2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木靜他
    • 総ページ数
      46
    • 出版者
      日本高齢期運動サポートセンター
  • [図書] いのちを選ばないでーやまゆり園事件が問う優生思想と人権2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木靜他
    • 総ページ数
      208
    • 出版者
      大月書店
  • [備考] 愛媛資料ネット

    • URL

      http://snet.ll.ehime-u.ac.jp/

  • [備考] 愛媛大学グローカル地域研究ユニット

    • URL

      http://glocas.net/index.html

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公開日: 2021-01-27  

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