本研究では、社会調査データと空間移動データを組み合わせて、大都市におけるモビリティの社会的不平等に関する分析を行なった。モビリティという問題意識は、近年社会学において取り上げられながらも、居住地特性が個人の日常的な移動とどのような関係があるのか、あるいは年齢や階層など社会的な属性によって移動に不平等は存在するのかという実証的な課題は十分に取り組まれてこなかった。 そのため、本研究では、居住地と日常的移動における不平等の問題に取り組むため、従来型の調査に加えて、携帯電話から取得できるモバイルデータな どを加えたモデルを構築し、困窮地域住民が他の地区住民よりも不利益にあるとする「社会的孤立」仮説を検証することを目的としている。本研究では、対象とする困窮地区の住民がどのていど空間的に移動しているのか、移動に社会的な格差が存在するのか(社会的孤立仮説)を検証するため、従来型の質問紙調査、フィールド調査に加えて、モバイル空間統計データおよび「人の流れデータ」を利用して分析モデルに加える。 セグリゲーションとジェントリフィケーションの分析については計画どおりに行なうことができた。研究成果の一部は編著『阪神大都市圏の研究』(2022)で公表することができた。しかし移動データの分析については方法論の検討にとどまり、調査データと結合した分析にまでには至らなかった。しかしこの方法で分析を行なうことが可能であることが確認できたため、近いうちにこの方法を用いた研究成果を上げることができるはずである。
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