研究課題/領域番号 |
19K21730
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研究機関 | 文化学園大学 |
研究代表者 |
熊谷 伸子 文化学園大学, 服装学部, 教授 (80328898)
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研究分担者 |
岡林 誠士 文化学園大学, 服装学部, 准教授 (30581813)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 循環型社会 / 衣類 / 資源化 / 処分方法 / 環境意識 |
研究実績の概要 |
衣類における次世代3Rのリサイクルに着目した基礎的研究を実施している中で,特に使用用途が明らかになっていない処分衣類の再資源化と,その方法の1つとして布の高密度固形化およびバイオコークス化を検討した.綿は120℃から280℃の間で成型を行ったが,240℃以降は温度をあげても黒色化せずに焦げる傾向が確認され,ウールは200℃まで温度を上げると茶褐色に全体が変化し,成型されないことが確認された.ウールは温度上昇中には特に問題なく進んでいくが,200℃で成型を行う際は,設定温度到達後の保持時間に煙や匂い,焦げなどを含む溶解が発生した.各布における高密度固形化およびバイオコークス化の最適加熱温度は,異なる可能性が示唆された. また,コロナ禍による実地での調査が困難であったことから,インターネットを用いた調査のみを実施し,本研究のベースとなる生活者の意識について考察を行なうこととした.衣類を種類で2分類した場合の(A:下着やシャツなど肌に直接触れるもの,B:それ以外)の入手・処分方法と,衣類を高価格帯と低価格帯の価格で分類した場合の処分方法,環境行動等に関する意識についての調査を2020年にインターネット用いて実施し,471名の有効回答を得た.その結果,2分類では,共にゴミとして廃棄する人が70.9%(A),65.0%(B)と最も多くなっており,自治体・企業による回収はB(24.6%)がA(19.3%)より,5.3%多くなっていたが共にその割合は低く,廃棄が一般的な処分方法であると考察された.一方,高価格帯衣類であった場合は,一般ごみとして廃棄する人が27.0%と,低価格帯衣類(66.5%)の半分以下に減ることが確認された.さらに,高価格帯衣類の場合は,古着屋やネットなどでの処分も低価格帯衣類よりも多く,リユースの傾向が高いことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究推進に当たっては現地および対面でのMTGに替えて,リアルタイムの動画等の共有を交えたオンラインMTGの環境を急遽構築することにより,研究を進めることができた. 衣類における次世代3Rのリサイクルに着目した基礎的研究の1つとして,使用用途が明らかになっていない処分衣類の再資源化を目指し,布の高密度固形化およびバイオコークス化を検討した.これにより活用法の幅を僅かならが広げることが出来た.しかし,コロナ禍により更なる実験や実地での調査が十分に出来ない状況が現在も継続しているため,研究全体のスケジュールに大きな影響を与え,遅れが生じている.特に,国内外での実地調査には着手できない状況になっているため,今後の研究計画において,大幅な変更を検討しなければならない. さらに一方で,コロナ禍によるインターネットを用いた調査では,衣類の処分方法としては廃棄が一般的であること,高価格帯衣類の場合は古着屋やネットなどでの処分も低価格帯衣類よりも多く,リユースの傾向が高くなっていた等が示唆されたが,このような衣類処分に対しても今後はコロナ禍による影響を加味した検討の必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
他のリサイクル品目で生活者の意識が大きく変化したように,衣類においても「衣類が資源になる」というパラダイムシフトの喚起を目指し,生活者および企業からの情報収集を本年度に整備したオンライン環境も十分に活かしつつ,実地での調査を含めて実施していきたい.特に,アパレル企業は商品製作の段階で地球に優しい素材を取り入れるようになりつつある現状がある.その一方で,衣類回収は収集に重きが置かれ,その後の活用までは提案が十分になされてはいない.そういった現況を鑑みながら本研究および本研究のベースとなる生活者の意識に対する実践的研究等を推進しいく予定である.また,コロナ禍による環境の変化や制限は想定されるが最終年度であることから取り纏めにも着手していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により国内外での実地調査および高密度固形化の基礎実験を行うことが不可能であったことが主な理由である.現状もまだコロナ感染拡大が続いてはいるが,衣類の循環型システムに構築に伴う情報の取集,生活者は本より企業への調査等を積極的に実施する予定である.
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