本研究は,コンピュータによる創作支援ツールを用いた著作物の創作活動を通し,高度情報社会における著作権のあり方を文化の発展の見地から総合的に考察することのできる人材育成を目的とする。 本目的を達成するために,①許諾された原著作物を用いた二次的著作物の創作環境の構築,②コンピュータ創作支援ツールを用いた素材の組み合わせと分割のロジック構築,③創作活動実践における学習者の著作権に関わる理解レベルを評価確認する手法の構築,の3つの柱を立てて研究を進めることを研究当初に計画した。 ①と②の柱に関し,本課題研究では,過去の実践データを用い,独自の二次的著作物の創作環境を構築すべく各種の検討を行った。基本的に,与えられた素材を組み合わせることによる新たな創作について,学習者の知見を深化させることを目指す計画であり,2019年度から2021年度は,独自開発した創作環境を前提に,学習者の創作が学習データに基づく適切な分類がなされるかの確認(2019年度),各素材の類似度を確認する分類ロジックの拡張(2020年度),完成作品の精密化(2021年度)と進めてきた。しかしながら,2022年8月にAIエンジンによる画像創作作品の受賞を契機に,StableDiffusionといったオープンで大規模かつ精細なAIエンジンによる描画の仕組みが台頭したため,2022年度後半からは,本研究計画の①と②のシステム構築については,独自構築は停止し,StableDiffusionを用いた③の柱の研究を主体にシフトさせた。 2022年度は,「③創作活動実践における学習者の著作権に関わる理解レベルを評価」に焦点を当て,授業実践による著作物の翻案の理解状況の確認を行うとともに,一般市民における著作権に関わる理解状況とAIエンジンを用いた作品制作に関する現状の調査を行った。近日中に論文として発表すべく準備を進めている。
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