研究課題/領域番号 |
19K21737
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
野坂 大喜 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (80302040)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 人工知能 / クリティカルシンキング |
研究実績の概要 |
【研究概要】AIを自動診断や最適化治療方針の決定等に活用するための臨床応用研究が始まっている。医療者はAI医療技術の特性に対し深い理解が必要であるとともに、批判的思考を持ってAIが出した解答を検証する能力も必要不可欠となるが、我が国の医療技術者教育においては、医療用AI技術教育やAIに対する医学的クリティカル・シンキング教育も行われていない。そのため本研究では次世代医療に対応できるAI技術能力とクリティカル・シンキング能力を双方兼ね備え、医療AI技術の利点と欠点を理解した上で、利活用を図ることを可能とする医療技術者を養成するための教育プログラム開発を行った。 【研究実績】2021年度は昨年度実施した「医療用AIに対するクリティカル・シンキングスキル開発プログラム」と「医療系学生クリティカル・シンキングスキル評価方法」について、客観的スコア判定を図るために簡易式評価シートの改良を行った。検討の結果、CBT方式にて継続的なスキル評価が可能な評価方法の確立に至った。また「医療用AI特性学習用アクティブラーニングプログラムの研究」について、臨床技術との融合を図るため、異型細胞や異常細胞の出現が確認された血液塗抹標本100症例について、顕微鏡画像データ2万枚を取得し、血液形態分析エキスパート向けのAI学習標準画像データセットを構築した。本画像データセットを健常人画像学習後のモデルに転移学習することで、病態解析モデルの構築学習を可能とした。上記教育プログラムについて臨床検査系学生を対象としたAI自己開発とモデル検証を実施した結果、データサイエンススキルとクリティカルシンキングスキルの向上効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である医療用AI特性学習用アクティブラーニングプログラムと医療用AIに対するクリティカル・シンキングスキル開発プログラムの確立において、学習用教材として健常人データと受診者データの双方のAI学習用標準画像データセットを開発するとともに、AI学習用e-Learningコンテンツ化を完了している。またクリティカル・シンキングスキルの評価においては数理データサイエンス分野との融合を図った従来にないスキル評価をCBTによって評価可能とした。これら教育プログラムの試行において昨年度と併せ計7名がAI技術に関連した卒業研究成果を発表するに至っている。加えて、本研究者も国際学会において3件の口頭発表、国内学会において2件の発表を行っている。以上のことから、本年度研究もおおむね順調に進展しているといえ、教育プログラムとしてのみならず、医療AI専門人材の育成にも研究成果の展開が図られている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においては、当初50人規模での教育プログラム検証や画像診断以外のAI学習教育用データセットの開発を予定していたものの、新型感染症感染拡大の制約によって、充分なデータ収集や検証が行えなかった。医療AIは検査支援技術のみならず、治療選択や予後予測技術などとしてさらに拡張が進められていることから、2022年度においてAI学習用コンテンツの拡充や研究期間中に開発された新AI技術の教育プログラム追加を図るとともに、規模を拡大しての検証を実施する。 これらの検証結果については医学教育関連の国際学会や国際誌において報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画においては、AI学習用データ取得時の補助技術者雇用のための人件費・謝金を計上していたものの、COVID-19感染拡大に伴い、雇用が困難となったため、使用額に変更が生じた。また同様に当初成果発表を予定していた学会が中止またはオンライン発表となったため、旅費の使用額と当初計画に差を生じることとなった。 次年度は協力先研究機関で収集予定であったAI学習用医療データを収集するとともに、本研究の教育プログラムの大規模な実証評価を予定していることから、これら経費として使用するほか、研究成果発表に係る経費として使用する。
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