研究課題/領域番号 |
19K21758
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 泰之 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (70273208)
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研究分担者 |
金子 真隆 東邦大学, 薬学部, 教授 (90311000)
高遠 節夫 東邦大学, 理学部, 訪問教授 (30163223) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 数学eラーニング / 手書きノート解析 |
研究実績の概要 |
オンラインテストの「解答」情報だけでなく,学習者がどのような誤答,準正答を経て正答に至ったかという解答過程と,どのような計算過程,思考様式(筆記速度,書き直しなど)に基づき解答を得たかというペン入力データは相互に密接に関連しているはずである。LMS上で得られたオンラインテストの学習データは立式,計算,検討などの思考過程を経て得られた「解答結果」であることに注意が必要である。一方,理数系教育では,計算問題等の解答結果だけでなく,解答を得るに至ったプロセスについても注視していく必要がある。そのために,これまで独立にその方法論が追求されてきた,解答結果と解答に至るまでの思考過程とを融合した形で解析することが効果的であると考えられるが,現在のところそれに関する有効な方法論はまだ確立されていない。本研究では,誤答,準正答,正答などの解答過程を含む結果としての解答データと,計算など思考過程の現れとしてのペン入力データとを融合した,ハイブリッド型の学習データ解析手法の確立を目的とする。
我々は,STACK で数学の問題に解答する際,解答だけでなく,デジタルペン入力によりタブレット上に思考過程を記述した手書きノートも併せて提出することのできる機能を,STACKの新しい「解答タイプ」プラグインとしてすでに実装済みであるが,この手書きノートから,筆記イベント時刻,消去イベントなどのログを収集する仕組みをMoodle のプラグインとして構築している。この機能を用いて,特徴量として,筆記速度,書き直しのための「消しゴム機能」の利用回数,筆記停滞時間に着目し,筆記状況の可視化の手法を開発し,解析の方向性について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
数学オンラインテストシステムである,STACKで数学の問題に解答する際,解答だけでなく,デジタルペン入力によりタブレット上に思考過程を記述した手書きノートの,筆記イベント,消去イベントなどのログを収集する仕組みをMoodleのプラグインとして構築し,その機能を用いて解析のための特徴量をある程度特定し,それによる学習者の特徴についてある程度推測することはできているが,学習者特性のクラスタリングなど,有益な応用の方向性が明確になっていない。
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今後の研究の推進方策 |
LMS上に蓄積されたオンラインテストの「解答結果」と,解答に至るまでの「思考過程」とからなる学習データを融合した形で解析するための法論として,本研究では,誤答,準正答,正答などの解答過程を含む結果としての解答データと,計算など思考過程の現れとしてのペン入力データとを融合した,ハイブリッド型の学習データ解析手法の確立を目的としている。
初年度は,STACK で数学の問題に解答する際,解答だけでなく,デジタルペン入力によりタブレット上に思考過程を記述した手書きノートも併せて提出することのできる機能を,STACKの新しい「解答タイプ」プラグインとしてすでに実装済みであるが,この手書きノートから,筆記イベント時刻,消去イベントなどのログを収集する仕組みをMoodle のプラグインとして構築した。その土台のもとで,筆記速度,書き直しのための「消しゴム機能」の利用回数,筆記停滞時間が有効な手書きデータの特徴量である可能性を見出したが,解答データとの関係性の精査を行いながら,ハイブリッド型データ解析手法の研究を継続する。その為の具体的な方法論を追求していく。まず,どのような解答(誤答,準正答など)を経て正答に至ったのか,蓄積されたデータに基づき,解答データ間の確率的関係性(条件付き確率)を明確にすることを計画している。本来であれば,実際に授業で利用しながら,解答データ,ペン入力データの大規模な収集,蓄積を行う予定であったが,コロナウィルス感染症対策のため,大規模な実験実施が困難であり,調査が計画どおりに進展していないため,限られたデータの中で,主に,ハイブリッド型の学習データ解析の方法論に関する内容に注力していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学習データ解析の手法に関する情報収集,成果発表のために参加予定だった国際会議2件が,コロナウィルス感染症の影響でオンライン開催となったこと,また,同様の理由で当初予定していた対面での研究打ち合わせができなかったことにより,旅費の残額が多くなった。
翌年度は,海外渡航が可能になった場合には,成果発表,情報収集のための旅費として,また,ペン入力データ収集のための調査に必要な謝金,利用端末の購入費に充てる計画である。
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