研究実績の概要 |
本年度は, コンピュテーショナル・シンキング(CT)の特徴や要素について抽出・ 分析することを通して,プログラミング教育の教材・評価材に資するための基礎資料を検討・提案することを試みた。 基礎資料ではプログラミングの状態を構成要素の関係で表示している。まず,Wing(2008)の主張から, 一番大きな構成概念として「Abstraction」と「Automation」を取り出した。続いて, IEA(2018)が示した2つの「Strand」に着目し,「Abstraction」と「Automation」の枠組みにそれぞれ対応させた。なお, Strand 1では, 「問題の概念化」として挙げられた3つのAspectのうち. 「問題の定式化と分析」及び「関連データの収集と表現」が「Abstraction」に該当すると考えた。「ディジタルシステムについての知識と理解」に関しては, CTを働かせる前段階で必要な要素として捉えた。次に, CAS(2015)が述べた, CTそのものを構成する5つの概念と, CTを発揮するための技術である「computational doing」を構成する5つの概念として位置づけた。最後に, CSTA&ISTE(2011)の述べた9つのCTに関する用語を検討した。用語の中には, 並列な関係にあるものや複数の用語をセットとして捉えられるものがあったため, そうした関係性が分かりやすいように表示した。また, CTスキルを強化する「態度や気質」については,CTを発揮する前段階で備えておかなければならない要素として捉えた。 さらに,この基礎資料に基づいてプログラミング教育で実際に行われている学習活動等を投影して実践的な検討を行うことを通して, それぞれの学習活動の性質や順序などを分析・検討できることを確認した。
|