若年無業者やフリーターが社会問題化したころ、出現した“フツウ”でないキャリア選択をする若者たちに対するキャリア教育の焦点は、若者たちをどうにかして学卒時に正規雇用で就職させることにあった。“フツウ”自体は疑うことなく、そこから外れた若者たちをいかにして“フツウ”に戻すのかが課題だったのである。今日、働く環境の変化に加え、働き方に関する価値観にも変化が表れ、“フツウ”そのものの問いなおしが迫られている。自らの当たり前だと思っていたキャリア選択を問い直し、仕事と生活のバランスのとり方や、何を重視して生活するのかといった観点から、自らのキャリアについて考える必要性があり、そうさせる教材の開発が急務である。一方、学校内部では既存の教材を使う学習から、自らでデータを集めて考える学習へと変化が起きている。そこで、2022年度は、「主体的に学習できる教材とは何か」、「教材として効果を持つとはどういうことか」という2点の課題意識を持ち、活動を行った。 具体的には、インタビュー活動およびこれらのデータの分析にあたり、大学生にインタビューをさせたり、データを丁寧に読ませることを通し、彼らがデータから何をくみ取るのかという観点からの分析を行った。その結果、「大学生には個性的なキャリア形成をしている人は、当初からそういうキャリアを形成しようとする意志を強くもった、自分とはまったく違う素質をもった人に違いない、という思い込みがあること」「インタビューやデータの丁寧な読み取りによって次第にそれらは解消され、見識を広げることが選択肢を広げるのだ、という気づきにいたること」「自らが“フツウ”だと考えていることが、どのような望ましさを想定しているのかについて考えること」などが知見として得られた。インタビュー経験やデータ分析作業がキャリア教育の教材として有効であることが明らかになった。
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