研究課題/領域番号 |
19K21794
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
辻本 雅史 中部大学, その他の部局, フェロー(学術) (70221413)
|
研究分担者 |
榎本 恵理 びわこ学院大学短期大学部, その他部局等, 教授 (00779449)
尾崎 博美 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 准教授 (10528590)
山崎 洋子 武庫川女子大学, 言語文化研究所, 嘱託研究員 (40311823)
弘田 陽介 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (60440963)
楊 奕 中部大学, 現代教育学部, 准教授 (60580751)
山名 淳 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (80240050)
大地 宏子 中部大学, 現代教育学部, 准教授 (80413160)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 親性 / 生涯発達 / 子育て / ケアリング / 養育の社会化 / 社会情動的能力 / 親教育 / 家庭科教育 |
研究実績の概要 |
年間5回にわたる研究会を実施し(8/23-24、12/03-94、2/19-20、3/16、3/18-20)、各自の研究の進捗状況を報告し議論を重ねるとともに、全体として今後の研究の内容と方向を常に確認・共有しながら研究を進めてきた。 コロナ禍で予定していた海外調査が困難であったので、海外のカウンターパートとは、オンラインを通しての交流のほか、直接招聘しての講演と研究会を行った。2月19日-20日の研究会では、英国在住の教育関係者(グラント純子)にイギリスの子育て支援の現状と課題をオンラインで講演してもらい、3月には英国の著名な進歩主義教育学校の20年余り校長職を務めた教育家(Foskett,Gary)を招聘して、その教育経験を通して明らかになった葛藤を含めた諸問題を、聞き出すことができた。 8月には2泊3日の研究会合宿を行い、研究報告と進捗状況を発表し、研究全体を構成する論点整理を行い、それぞれ自らの研究を全体構成の中に位置づける確認を行った。12月に大阪公立大学教育学会と共催で、きのくに子どもの村学園副園長を迎え山﨑を含むパネラー3人のシンポジウムを開催した。翌日大阪・パドマ幼児園長秋田光彦と幼稚園保護者の現状について座談会と研究会を行った。 3月に徳島の遍路宿で、不登校児童生徒の居場所「ひとみ学舎」代表(居上公美子・研究協力者)と保護者(親芋の会)、20年以上継続した「子ども遍路歩き」の関係者と座談会形式のインタビューを実施し、併せて「親性」生成教育に関わるアンケート調査を実施し、貴重なデータを得た。 研究成果は、①学会発表(保育学会等榎本2、アートミーツケア学会等=弘田、正保2、講演:辻本,山名)、②論文投稿(榎本2,弘田2[英文誌1]、楊奕2)、③著書(単著=榎本、共著=山名、楊奕)、講演(弘田、辻本、楊奕)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のために、予定していた海外への調査出張がほとんど実施できなかった。そのぶん、研究が遅れている。ただその中で、2月に入ってドイツ(山名)とイギリス(山崎)への渡航を実現でき、遅れていた部分の一定程度の回復ができたが、まだ当初のおおむね5割程度しか、進んでいない。中国のカウンターパートとの間では、おもに楊奕によって、オンラインでの情報の収集や交流を進める努力は続けられ、政策面に関わる情報を得ることができた。 海外調査の補完として、カウンターパートとオンラインでの講演と聞き取り(グラント純子)や英国の著名な教育家・Foskettの招聘などを行って一定の成果を得ている。 おもに国内の活動によって研究している者は、比較的順調に研究の進展がみられた。9月には辻本が富山県八尾町の「風の盆」の伝統を維持する地域共同体の継承の仕方のうちに、前近代社会の共同体の人間形成の在り方を探る調査を実施したが、その「親性」生成にいかにつなげるか、短時間の単独調査では十分といえず再度の調査が必要である。 「親性」生成に関わる認識や理解度を調査するためのアンケート調査用紙は議論の末、作成できたが、実際のそのアンケート調査の実施はまだ徳島で行ったのみで、データの蓄積はまだ不十分である。今後そのデータを、学生用、教育関係者用、一般成人用と分けて、増やしていく努力が必要である。それを海外でも実施できるよう、現在、英語版、中国語版を作成中である。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は海外渡航が大幅に可能となる見込みであるため、当初の計画にしたがって、渡航調査を、可能な限り実施する。ドイツ(山名の哲学的文献調査や学術交流、弘田の伝統習俗としての幼児・保育者支援の存在[ヘバメ]の調査)、イギリス(山崎の英国子育て支援や「親性」生成に向けた教育のカリキュラム調査、豊かな人的ネットワークを生かした聞き取りや参与観察等)、中国(楊奕の中国への渡航と関係文献の収集とその翻訳・紹介、カウンターパートとの共同調査や研究連携作り)、アメリカ(尾崎、子育ての新たな共同性を探求し、新たなホーム概念構築のために、文献収集と関係機関の訪問や識者へのインタビューなど)が計画されており、遅れの回復が十分見込まれる。 12月に、中国の関係機関の研究者3名(首都師範大学2、中国人民大学1)を日本に招いて、中部大学において国際シンポジウムを企画している。幼児教育機関の整備に迫られている現代中国と情報を交換するとともに、制度やシステムの比較の上で、日本における「親性」の生成に有効な手立てを探る予定である。併せて「親性」生成をめざす本研究主題の意義や有効性を、中国の教育研究者や教育実践者たちに理解されるよう努め、「親性」研究とその生成に向けた学術研究の国際的な連携を深める。 22年度に作成済み「親性」生成に関わるアンケート調査を、可能な限り国内・国外を問わずに実施し、そのデータの分析を行うことで、新たな知見を見出し、論文作成につなげる。 2023年度は、本研究の最終年度あるので、各自の研究テーマの全体での位置づけつつ、その研究成果を論文化し、報告書作りにつながる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナパンデミックが想定以上に長引いたために、当初予定していた海外調査研究がほとんど実施できなかったこと、および国内での出張をともなう調査も、実施が困難であったために、研究計画が大幅に遅延し、結果的に助成金、なかでも旅費の使用が進まなかった。そのため結果的に未使用になった助成金は繰り越して、2023年度の研究計画に組み込んで使用せざるを得なくなった。2023年度は、海外渡航が可能となる見込みであることを前提に、当初の計画にもとづいて、英国、ドイツ、アメリカ、中国などに、カウンターパートとの連携の下、渡航調査を積極的に実施する。そのための旅費の使用が大きくなる。 加えて、中国から3名の学前教育(就学前の幼児教育)の研究者と実践者を招き、国際シンポジウムを開催し、「親性」研究と「親性」生成の教育の重要性と喫緊の課題認識や理解を、海外研究者にも共有することをめざしている。 2022年度に作成した「親性」生成に関するアンケート調査を、海外も含めて、可能な限り広く多く実施し、そのデータの整理と解析に努める。そのために大学院生等の人件費も必要となる。 2023年度は研究計画の最終年度のために、研究成果の国内外の学会発表を行うために、これまで以上の出張旅費の使用が見込まれる。
|