本研究は、出生コーホート別にみた学歴別生涯所得を、疑似コーホート分析によって推計することを目的としている。本年度はまとめとして以下の分析や検討を行った。 1.就業構造基本調査を用いて物価調整を行ったうえで、5年コーホートを5年間隔の年度にあわせて組み合わせすることによってコーホート別に集計し、学歴別の多様な年齢段階での所得を推計した。ここではいくつかの年齢幅に関して、集計した合計所得を求めコーホート間の比較を行い、どの年齢層において、どのコーホートが比較優位になるのかを検討した。 2.就業構造基本調査を用いて学歴別に生涯所得モデルを年齢と年齢2乗に回帰させて推計し、そのモデルを用いてコーホート別に生涯所得を推計する作業を行った。これにより25歳から54歳までの30年間の「生涯所得」を、3コーホートに渡って推計する作業を行った。また特定年度による所得把握の方法の特異性のバイアスを除去するために、各年度の所得把握基準を統一した分析も別途行った。 3.個人の学歴別生涯所得の推計とともに世帯単位での所得の不平等問題にも学歴が関連している。この問題では、学歴同類婚の変化が夫婦合算所得の不平等にどのような影響を及ぼすのかに関心を持たれる。この基礎分析となる夫婦合算所得の不平等の変化に関しては、すでに複数の学会で報告してきたが、学歴同類婚の趨勢やそれと関連した所得同類婚の変化がどのように関わっているのかを、国際共同研究として進めた。
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