研究課題
人間を取り巻く地形・水文・気象・植生・土壌などの自然環境と,道路・住宅・店舗・企業・農地などの人工環境をあわせて地理環境と言う.近年,地理環境が人々の健康行動に強く影響することが報告されるようになった.一方で,社会環境(例えば,学歴・経済的格差,コミュニティの統合や相互支援の度合,地区の評判)も健康に影響を及ぼす.貧困な者が多い地域では物的資源や社会的なサービスを利用する機会が剥奪され(地理的剥奪),不健康のリスクが高くなるといわれている.我が国においては,地理的剥奪水準が高い地域では成人の死亡リスクが高くなることが示されているが,子供の健康行動を対象とした研究は報告されていない.最終年度は,地理的剥奪水準の違いによる身体活動と座位行動について検討した.小学5年から中学3年までの小児約8千名を対象とした.国勢調査から貧困と関連のある指標を重みづけし合成した町丁目ごとの地理的剥奪指標(中谷, 2011)を学校区ごとのデータに変換し,剥奪水準の低い順から,対象を三分位(Low・Mid・High)に分けた.身体活動はトレンド検定の結果,男女ともに地理的剥奪水準が高いほど中高強度身体活動(MVPA)が多くなる傾向が有意に見られた(p<0.01).また,座位行動は,男子はLow群と比較しMid群,High群の休日の座位時間,スクリーンタイムが多かった(p<0.01).一方,女子ではL群よりもH群の方が休日の座位時間,スクリーンタイムが有意に高値であった(p<0.01).しかしながら,男女ともに平日の座位時間に有意差は認められなかった.地理的剥奪水準が高いほど小児のMVPAが多くなる傾向が認められ,一方,剥奪水準が高い地域は,休日の座位時間およびスクリーンタイムが多いことが示された.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
INQUIRY: The Journal of Health Care Organization, Provision, and Financing
巻: 58 ページ: -
10.1177/00469580211055626