研究課題/領域番号 |
19K21799
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研究機関 | 京都文教大学 |
研究代表者 |
中島 千惠 京都文教大学, こども教育学部, 教授 (20309107)
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研究分担者 |
服部 美奈 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (30298442)
杉本 均 京都大学, 教育学研究科, 教授 (50211983)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 公教育制度 / 就学義務 / ホームスクーリング / オールタナティブ / 共通の基盤 |
研究実績の概要 |
本研究は公教育の発展を第1段階(量的拡大)、第2段階(量の拡大と質の向上)と捉え、次の段階を模索する挑戦的研究である。普通教育機会確保法(2016年)の制定、不登校14万人超え、全国から7000人以上の児童を受け入れているN高の誕生、外国人労働者の受け入れ拡大の方針などは、日本の公教育と公立学校制度の在り方を問い直す必要性を示唆している。このことは、教育の多様化が進んでいるアメリカにおける社会現象が示唆するように、社会の分断の危機も孕んでいる。日本の公立学校は日本社会の平等と学力レベルの高い国民、そして労働者層の確保に多大な貢献をし、なくてはならない社会的仕組みでもあった。多様性を尊重しながらも、社会の分断を回避する方法はないのだろうか。本研究は、①多民族国家(アメリカ、インドネシア、マレーシア)において従来型公立学校に就学しない人々の実態と②そのような児童達が公立学校とつながりを持ち、共通の教育基盤をもてるよう、どのような公的仕組みが政策的に形成されつつあるかを調査し、社会の分断を回避するための日本的仕組みを追求することを目的とする。 平成19年度は3回の研究会を開催し、このテーマに関連する各国の特徴、就学義務に関連する法規定、関連する学校、団体、組織などについて情報交換を行った。また、国は違えど、比較可能な共通の視点を持って調査する必要があり、共通の視点についても検討を重ねた。宮口は義務教育としてのホームスクーリングの制度原理について、アイオワ州(アメリカ)の規制と支援についてまとめた。 中島は2019年度中にアメリカの調査を実施し、宮口はアメリカ留学の準備を進める予定であったが、新コロナウイルスの国際的な感染拡大によって、2月から3月にかけ両者とも急遽、計画を大きく修正せざるを得なくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
①新コロナウイルスの世界的拡大のため、予定していた海外調査を見合わせざるを得なくなった。メンバーの安全のため、代表者が3月に予定していたアメリカの調査は1月末に延期を決定した。2020年5月に訪問できればと考え、調査先にもお願いしていたが、感染の世界的拡大により5月どころか6月の時点でも調査再開の見通しが立たない状況である。2021年まで待たなければならないかもしれない。アメリカだけでなく、他のメンバーの海外調査も延期を余儀なくされている。
②今年度の文献調査などについてまとめる予定であった2月以降の段階で新コロナウイルス対応、卒業式、入学式中止など学内行事やスケジュール全般の検討と修正、またそれに伴う学生支援、オンライン授業ための技術の研修・習得と授業教材の作成に追われ、着手する余裕がなかった。
③オンデマンドの教材作成と配信は大変時間のかかるものであり、研究代表者の場合、土曜日も日曜日も教材作成や学生からの課題の点検などに追われている。また、家庭の状況が急変した学生やICT環境がなかなか整わない学生、オンデマンドの授業形式にうまくついていけない学生達に電話やオンラインで対応し、科研の研究集会などに時間を割く余裕がほとんどない。今は前期の授業を無事乗り切ることで精一杯の状態である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も半年以上、海外調査は困難であると予測されるため、研究計画を練り直す必要がある。まず、オンラインで研究集会を開催し、今年度、各メンバーができる研究作業についてブレインストーミングし、インターネットを活用したインタビューやアンケート調査などが活用できないか検討する。しかし、前期は学生支援を優先する。オンライン授業への対応だけでなく、大変な状況でネット環境もない、あるいは自分の携帯さえ所持していない新入生や、オンライン学習には慣れていない在学生への対応を含む学生支援を優先する。また、我々もほぼ初めてのオンライン教材作成づくりとその配信について多くを学ばなければならない。どのメンバーもかなりのストレスの下にある。 前期の授業が終了する8月頃に会議を開催し、本研究を推進するための研究計画について審議する。このような困難な状況であるが、本課題が意識しているのは、何等かの事情で通常の学校に行けない児童の存在である。感染予防のため、全国の学校で自宅学習が推進されている現状は、全国一斉ホームスクーリング状態に近い。公教育制度の在り方の変容をもたらす契機にもなりうる事象であり、むしろ有意義な情報を提供してくれる可能性も秘めている。視点を柔軟にして再度、研究計画を練りなおすことができると考えている。極力、国内外の研究者とオンラインでつながる方策をたて、研究内容の深化を図る。 海外調査は日本と渡航先の状況を鑑み、無理がないことをしっかり確認した上で実施する。ワクチンの完成あるいは治療法が特定していることが重要なポイントになると考えている。よって、海外調査の時期についての検討は海外渡航の安全性について公的に一定の情報が発信されるのを待って開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:2019年度内に実施する予定であった海外調査が新コロナウイルスの世界的感染拡大と国際的感染予防対策のため、実施不可能になった。そのため、その予算を2020年度に繰り越し、2020年度に感染の終息と治療薬の開発の状況を見て調査が実施できるようにした。 使用計画 ①海外調査の実施:前年度実施できなかった海外調査を実施する。しかし、新コロナウイルス感染は第2波、第3波が来ないとは限らない。現時点では9月以降の様子を見て、海外調査の実施を計画する方針である。②資料整理のためのアルバイトや専門的知識や技術提供に対する謝金:海外調査が2020年度も困難となった場合、それは同時に対面授業が困難で、オンデマンド授業など継続して授業や学生支援の負担が大きい状況であることが予測される。その場合、インターネットを介して収集した資料や調査先から資料を送ってもらい、それら資料の整理をアルバイトや内容によっては専門的な翻訳者に依頼して整理を進める。また、可能ならば調査対象地における専門的知識を有する行政官、研究者、あるいは現場実践者によるオンラインのプレゼンを依頼し、その謝金として使用することも検討する。
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