研究課題
一般的な発達上の問題として捉えられる音声言語発達障害(Spoken Language Disorders : 以下、SLD)は、専門家間でも概念や基準などについては不一致であることが多く、近年、欧米圏を中心に検討が進められている。本研究の目的は日本におけるSLDの概念や基準などを検討し、特性理解や社会とのつながりを促進するために利用できる情報共有ツールを開発することである。そのSLDの概念や特性を明らかにするため、子どもの言語障害に関する様々な資料から39項目の質問票を作成し、子どもの言語障害に専門的に関わった期間が15年以上ある専門家43名を対象にデルファイ法にて検討した。調査票ではリッカートスケール(7件法)にて80%以上を合意水準とした。ラウンド2以降では80%に至らなかった質問を再構成し、22項目の調査票を作成し再調査を行った。結果、ラウンド1に参加した専門家の経験年数は24.8±6.8年(15年~37年)であり、質問項目の39項目中、合意形成に至った項目は5つであった。ラウンド2では、22項目中18項目で合意が形成された。ラウンド3では4項目にて60%以上の合意が形成された。以上のことから、日本おけるSLDの中核症状は、音韻、形態、意味、語彙、構文、語用といった言語領域に生じる問題として捉えていることが明らかとなった。また、言語発達に関連する様々な発達障害との関係性については、SLDの起因とするよりも、同時に生じる別の障害として捉えていた。それら結果をもとに、研究者間で協議を重ね言語発達障害の特性を示す14項目からなる情報共有レーダーチャートを開発した。日本の音声言語病理学領域で子どもの言語障害の概念などについて言及した研究は少なく、本研究がきっかけとなり、子どもの言語障害について、さらなる検討が行われることで、この分野の発展につながるものと考える。
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