研究課題/領域番号 |
19K21805
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高野 裕治 東北大学, スマート・エイジング学際重点研究センター, 准教授 (00424317)
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研究分担者 |
中嶋 智史 鹿児島純心女子大学, 人間教育学部, 講師 (80745208)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 表情 / 神経基盤 / 進化 / ラット / 扁桃体 |
研究実績の概要 |
本課題では実験室ラットの表情認知の神経基盤を解明し、表情機能について進化的に議論するための土台を構築するものである。初年度に、ラット表情弁別実験の準備と脳局所破壊環境の整備を実施した。本年度は初年度の準備を受けて、本実験を進める計画であったが、世界中で流行したCOVID-19の影響を受けて、計画の進行の仕方において、影響は不可避であった。まず、本実験は動物を購入後、予備飼育期間を経て、脳局所破壊手術を実施し、回復期間をあけた後に、行動実験を実施して、その後に解剖的な検討を実施するルーティンで構成されている。このため、年間を通じて、実験者の行動制限が懸念される状態での活動は困難をきわめた。そこで、本年度はこの実験の精度を決める脳局所破壊の主義の鍛錬に当てた。さらに、そのより充実した手術環境についての整備することができた。このためラットにおいて本研究がターゲットとする脳部位の局所破壊をより安定的に実施することが可能となった。COVID-19による室内での研究活動の遂行は、分担者との議論を遠隔会議システムにより、活発に行う上では、予想を超える成果を生むこととなった。分担者の先生との議論を重ねることで、分担者の先生がヒト以外の哺乳類における表情と表情機能に関するレビューを公刊するという成果へと至った。さらに、研究代表および分担による議論を発端とした研究コミュティも拡大させており、哺乳類を超えて、魚類や頭足類などへの表情機能研究の可能性もだいぶ拓けてきた。COVID-19対応に尽きる年度であったが、これまでの研究実績を次年度に円滑に活用する成果は挙げられたとも言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗状況は、やや遅れていると判断している。 COVID-19対応の中でも可能な研究進捗は実施してきたが、計画の遅れは生じている。しかし、最終年度に計画をより円滑に進める準備はしてきたので、この遅れを次年度に取り戻す準備も同時に進めることはできた。また、本研究の重要なテーマとしてある表情機能の進化的基盤については、分担者との議論により、分担者がレビューを公刊することができたので、このレビューの土台の上に、今後も研究を様々な生物種に広げていくことが現実的になってきた。最終年度に様々な動物種で研究する諸先生方とさらに積極的に議論を重ねていくことで、理論面については本研究計画の達成に近づいていると言える。最終年度は、今年度のCOVID-19対応経験を活かして、安定的な研究活動を目指していき、計画全体の達成および次の研究立案の着想も育てて行きたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については、研究代表の所属異動が生じたため、COVID-19対応も含めて、より柔軟な方略が必要となろう。しかしながら、研究に必要とされる部分ごとの手技は確立されている状況にあるので、COVID-19流行の中、ソーシャルディスタンスを保ちつつ、利用可能な実験環境を早急に準備することで、データ収集を実現することを計画している。また、データ収集期間を可能な限り、短期間でまとめてできるようにも、研究に必要となる手技を確立してきたので、この成果をまとめ上げる形で、最終年度にラットの扁桃体局所破壊による表情弁別への影響を円滑に取りまとめを進めていきたい。さらには、ラットの成果を土台として、他の動物種との比較について、研究分担者と連動して、より広範囲の動物種での議論を活発にしていくために、遠隔会議をより積極的に使うことで、距離の隔たりを乗り越えて、理論形成の速度をあげていきたいと計画している。理論形成研究は円滑に進むことが予測されるため、議論がまとまった動物種についても積極的に、ラットで確立した行動実験を広げていくことで、表情機能の神経基盤研究を推進することができると見込んでいる。この時、実験室運用のようなCOVID-19対応の影響を受けやすい動物種もさることながら、より小動物を対象として、研究代表の個人研究室での推進することで、研究の遅れを取り戻していき、当初計画を超える成果を創出を試みたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の世界的な流行により行動制限が生じたため、予算計画においても変更が生じた。現時点においては、研究内容においては大きな変更は生じさせずに、最終年度に計画した全実験を実施するため期間全体における使用計画についての変更は生じていない。
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