本課題では実験室ラットの表情認知の神経基盤を解明し、表情機能について齧歯類を中心としつつも、種を超えて進化的に議論するための土台を構築するものである。特に、人の研究において表情 認知と関連が深いことが知られている扁桃体の役割に着目する計画であった。まずはラット表情弁別実験の行動実験の準備と扁桃体局所破壊環境の準備を実施する予定であった。しかしながら、計画は世界中で流行したCOVID-19の影響を受けて、進行において遅れが生じてきた。本年度はその遅れを取り戻すために、計画を立案していたが、COVID-19の流行はより拡大していき、研究の進行には困難もともなった。特に、本研究において計画されている実験は動物を購入後、予備飼育期間を経て、脳局所破壊手術を実施し、回復期間をあけた後に、行動実験を実施して、その後に 行動データの解析および解剖的な検討を実施するルーティンで構成されているので、行動制限のない期間が1ヶ月は必要となる点に困難さがあった。このため、個々の技術の精度を上げて、より短期間に進めることができるように訓練を繰り返した。そして、行動データの解析と解剖的な検討については、後日においても可能なため、データ収集までに的を絞り、本年度期間にわずかに訪れた機会に短期に集中して、行動実験を実施し、データ収集をすることができた。現在、解析を実施して、論文準備する段階まで進むことができている。今後の論文公刊に向け手の成果をあげることができた。また、研究活動を通じて、魚類や頭足類を対象とする研究者と情報交換する機会を遠隔会議を利活用することで実現できた。種を超えて表情研究に取り組む体制作りが飛躍的に進めることができ、齧歯類に限らず表情研究に取り組む土台作りができた。
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