研究課題
意思決定を行うには、習慣的システムと目的指向的システムが状況に応じて切り替わりながら、協調的に働くことが必要である。これら情報処理システムの協調的バランスに問題が生じると、自己制御能力の低下や近視眼的意思決定に繋がる。意思決定に異常があると言われている精神疾患に依存症がある。依存症の中で社会的且つ医薬学的対策が急務なのはギャンブル障害であるが、ギャンブル障害において情報処理システム間のバランス破綻に着目した報告は少ない。本研究では、①げっ歯類を対象とした情報処理システムを評価する新規行動試験の開発・発展、②モデルフィットによる情報処理システム間のバランス異常を示すパラメータ推定、③ギャンブル障害関連遺伝子の情報処理システムへの影響から、意思決定システム間バランスを評価する行動試験の開発・発展と情報処理システムの解明に挑戦する。初年度はDRD2-Creラットを用いて、選択的な間接路機能を調節できるか確認した。AAV-FLEX-DTAをDRD2-Creラットの側坐核領域にインジェクションすると、DRD2陽性細胞が減少することを免疫組織学的検討により明らかにした。このことから、間接路特異的な神経脱落を誘導できることが分かった。また、このラットの体重もコントロール群と比較して大きく変動しなかった。さらに、間接路の特異的な遺伝子をノックダウン、特にDRD2をノックダウンさせるため、CRISPR/Cas9システムを導入し、in vitro実験に着手した。
3: やや遅れている
行動実験に少し遅れがでている。
今年度は、意思決定システム間バランスを評価する行動試験の開発とギャンブル障害関連遺伝子の機能的役割の解明に挑戦するため、以下の実験を行う。実験1:臨床研究を反映させたげっ歯類の情報処理システムを評価する行動試験を開発・発展させる。実験2:モデルフィット化による情報処理システム間のバランス異常を示すパラメータを推定する。Weighting parameter(システム間比重)、学習係数(更新度合)、逆温度(選択のランダム性)、perseveration (反復性)などのパラメータを抽出する。
行動実験が次年度中心になることから、研究費の有効利用と研究計画の円滑な実施のために生じた。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件)
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