研究課題/領域番号 |
19K21813
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
明和 政子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (00372839)
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研究分担者 |
田中 友香理 関西大学, 心理学研究科, 特別研究員(RPD) (00794075)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 身体感覚 / 発達 / 乳児 / 内受容感覚 / 社会的相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,生後1年のヒト乳児を対象に,対人相互作用時の皮膚接触を実験的に操作し,外受容感覚―内受容感覚の統合にみられる個人差を明らかにすることである.新型コロナウィルスの感染拡大により,対面での調査実施は今年度も不可能となった.よって今年度は,これまで取得した乳児(N=32)のデータを活かし,新たな解析手法を検討,適用することで論文化を目指すこととした.
【手続き】(1)安静時計測:実験に関連のない動画を呈示中の乳児の脳波・心電図を同時計測した.(2)経験フェーズ:2種類の新規の顔写真を10秒間ずつ交互に呈示した.一方の顔写真の呈示中,実験者は乳児の足を撫で(実験条件:皮膚接触あり),他方の顔写真の呈示中,実験者は何もしなかった(統制条件:皮膚接触なし).この間の乳児の脳波と心電図を計測した.(3)テストフェーズ:経験フェーズで呈示した2種類の顔写真を1秒間ずつ交互に呈示し,刺激を呈示中の乳児の脳波と心電図を計測した.皮膚接触あり条件と接触なし条件で経験した写真を見ている最中の脳波を条件間で比較した. 【成果】これまでのデータを解析した結果,刺激呈示後,300-400ミリ秒(N290)および500-600(P400)ミリ秒の期間,後頭部の脳波に条件間で差異がみられた.統制条件に比べ,実験条件においてポジティブな脳活動が確認された.皮膚接触の有無が,乳児の脳活動を調整していることが確認できた.心拍と脳波データとの関連については,安静時の心拍数および心拍変動と,テストフェーズ中の脳波の間には有意な関連がないことがわかった.経験フェーズ中の心拍数や心拍変動と脳波との関連,およびテストフェーズ中の心拍由来電位(HEP)と脳波との関連についても解析を進めている.現在得ているデータの解析手法を検討,開発することで成果をまとめ,国際学術誌へ投稿することとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳イメージング,とくに脳波計測は,体動やまばたきの影響などを受けやすい.よって,乳児を対象とした研究は,成人の場合と比べて圧倒的に困難である.これまでの経験から,乳児の脳活動が計測できたとしても,解析に足るデータはその半分にも満たない場合も多い.こうした制約に加え,新型コロナウイルス感染拡大による対面実験の再開も行うことができず,データの収集という点できわめて厳しい状況にあった. こうしたやむなき事情に長期間向き合ってきたが,すでに収集済のデータの解析手法を見直し,再検討してみたところ,データ数を増やさずとも,質のよい解析を適用することが可能であることがわかった.この新たな解析手法の適用を進め,学術論文への投稿を目指している.
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今後の研究の推進方策 |
現時点では当初予定通りの計画遂行が実現できている.今後のコロナ禍の状況しだいで追加 のデータを収集できる可能性もあるが,基本は,すでに得ているデータに対して新たな解析手法を適用し,論文執筆活動に注力することで,最大限の成果をあげるよう尽力する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により,対面で予定していた調査のほとんどが中止になったことから,調査にかかる物品や謝金等の執行予定に変更が生じた.また,予定していたオンサイトでの国際学会やシンポジウム開催がオンラインまたは中止となったことから,それにかかる旅費として執行を予定していた額に変更が生じた.
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