研究課題
本研究では、長期的な視覚経験による認知変容のメカニズムを機械学習の手法などを利用した構成的な手法によって検討した。並行して、その基盤となる視覚認知の文化間変異についての行動データをさらに収集して、構成的手法との整合性を検討した。文字認識が視覚探索に対する影響を検討するために、視覚探索の標準的な計算モデルである顕著性マップモデルに着目し、視覚探索非対称性が文化によって異なるという知見を説明するメカニズムとして、探索時の注意範囲の大きさ、文字の長期経験による視覚特徴セットの差異の効果をシミュレーション実験で検討した。探索時の注意範囲が小さい場合は日本人が示す非対称性の欠如、範囲が大きくなるとアメリカ人が示す探索非対称性が再現できることが分かった。また、ひらがな、漢字、アルファベット、風景写真のデータセットを独立成分分析した結果抽出される視覚特徴に質的な差異があることが示され、視覚経験により異なる視覚特徴が用いられるようになることが分かった。景観の認知が視覚認知に与える影響を検討するために、長期経験による視覚認知特性の変容をシミュレーションする基盤となる日本各地の市街地の風景を集めた画像セットを完成させた。これにより、長期経験がヒトの認知変容に与える影響をこれらの共通プラットフォームを用いて検討することができるようになった。ある文化に長期的に触れることによってヒトの認知がどのように変化するかについて、視覚探索課題、ストループ課題、顔認知の観点からこれまでの研究をまとめ、雑誌論文およびハンドブックの一章として出版した。また、実験による文化間比較データの収集に加えて、世界各地の過去の研究結果を集約して検討するためのプラットフォームの基礎となるオントロジー構造を作成した。
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Psychologia
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