研究課題
本研究では,ソーシャルネットワーキングサービス(以下,SNS)を活用した心理相談について,専門的技法と機能的システムの開発および理論的基盤の構築を行うことを目的とした。まず、心理相談としての効果と機能について検討するため、高評価事例と低評価事例を分ける要因について検討を行った。匿名化された約1000例の実際の相談データについて、臨床心理学の専門家が5段階で評価を行い、その結果をもとに評価の高低を決定する要因について分析した。その結果、相談員の発話の感情価がポジに触れすぎることは低評価につながりやすく、反対に相談員が安定して中立的な感情価を保っているとセッション後半に相談者の発話の感情価がポジにふれていく動きを見せることが明らかとなった。また、トピック分析を用いて抽出したトピックと相談員の記録の比較による分析からは、低評価の相談員はそもそもセッションの中で話されているトピックをうまく捉えられていない可能性も示唆された。続いて、本研究期間中に世界がコロナ状況下に入ったことを受け、コロナ専用SNS相談窓口に寄せられたデータ(匿名化済み)の解析を行った。その結果、コロナ状況下での頻出上位5トピックは「コロナ症状不安」「心理的不安」「子育て」「失業・求職」「職場ストレス」であった。これらが時期によりどのように移行していくかを分析したところ、感染に伴う「コロナ症状不安」は実際の感染者数と同期するように出てくるのに対し、実際に感染はしていないが心理的に作り出された不安である「心理的不安」は約3ヶ月で落ち着きを見せることが明らかとなった。これは、人の心がもつレジリエンス機能を示唆していると共に、長期的な感染対策を呼びかける際には、不安が落ち着く時期以降には工夫が必要だと言うことも示唆している。その他にもコロナ状況下でSNS相談が果たした役割等についても検討を行った。
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PSYCHOLOGIA
巻: 65 ページ: 100~129
10.2117/psysoc.2022-B030