研究課題/領域番号 |
19K21818
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
伊澤 栄一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (10433731)
|
研究分担者 |
川合 伸幸 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (30335062)
池田 譲 琉球大学, 理学部, 教授 (30342744)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
キーワード | 鳥類 / 頭足類 / 霊長類 / 身体操作 / 道具使用 |
研究実績の概要 |
本研究では、身体延長の基礎となる身体部位の操作および認知機能について、霊長類(ヒト)および頭足類(タコ、イカ)との比較研究を進めている。鳥類の研究では、カラスを対象として、拡張された身体部位の操作能力を支える感覚運動基盤として、動く標的(餌)への到達把握運動のメカニズムを調べるために、行動実験を行った。カラスに動く標的(餌)を提示し、それを捕捉する行動を高速カメラで撮影する行動課題を行った。標的の速さを3条件設け、それらに対する捕捉運動の運動特性について数理モデルに基づく解析を行った。その結果、カラスが動く標的を捕捉するのに成功するための嘴近傍の空間が存在し、その大きさは自身と標的の相対速度に応じて規定されることが判明しつつある。 霊長類(ヒト)研究では、他者が存在するとの認識によって、実際に存在しないにもかかわらず、脳活動や行動に変化が生じることを示した。また、身体運動をさせることで、バーチャルリアリティー空間内の日本刀の美しさの評価が高まることを見出した。 頭足類の研究ではタコを対象に、腕の運動特性を支える解剖学的な基盤を探るために、数種の熱帯性タコ類の腕について組織学的観察を行った。具体的には、腕の部位による筋繊維の配置状態、神経の走行について調べた。また、これら解剖学知見を加味して、身体拡張に関わる行動実験に用いるタコの腕模型について検討し、試作品を作成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、鳥類、霊長類(ヒトを含む)、頭足類の3つの分類群の動物種を対象に、人工的な身体部位延長を行い、身体操作の柔軟性を主観比較することで、身体拡張性の普遍基盤を解明することである。初年度は、ヒトでは身体拡張による認知的な影響の検証を行うことができており、カラス、イカにおいても、運動学的解析が確立し、身体部位延長のための人工器具の準備が進んでおり、次年度に予定している種間比較実験に向け順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
鳥類研究では、動く標的の捕捉運動に関する数理モデル解析研究を終了させ、嘴延長によって捕捉運動空間がどのように変化するかを調べる。 霊長類(ヒト)研究では、身体運動によって操作・知覚対象の力強さの認識などが変化するかを調べる。 頭足類研究では、熱帯性タコ類を対象に、偽の腕を装着させることで本来より長い腕を持たせ、タコがこれを用いて物体の探索、掌握といった、通常行動を行い得るか詳細に観察する。また、装着させる偽腕の長さを違え、腕伸長の影響を定量的に評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初雇用予定であった研究員が平成31年度(令和1年度)については他資金で雇用されたため、当該予算を支出しなかった。当該予算は、次年度(令和2年度)に同研究員を雇用するために支出する計画である。
|