研究課題/領域番号 |
19K21819
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
梅田 聡 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (90317272)
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研究分担者 |
三村 將 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (00190728)
寺澤 悠理 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 准教授 (30585790)
朝比奈 正人 金沢医科大学, 医学部, 教授 (40301098)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 自律神経 / 内受容感覚 / 予測処理機能 |
研究実績の概要 |
本研究は,情動や記憶,社会的行動に影響を及ぼす要因である自律神経活動システムに着目した研究を実施することが目的である.自律神経系の活動は,我々が常に意識することはできないが,無意識的にさまざまな認知機能に影響を及ぼしていることがこれまでの研究から示唆されている.本研究においてそのメカニズム解明に当たり注目するのが,自律神経活動が介在する内臓の動きに関する繊細さを示す「内受容感覚」である.特に本研究では,自律神経系の持つ予測機能に焦点を当て,それが心身の状態を安定化および不安定化させることを仮定し,それを実証する実験を実施している.本年度は,昨年度に引き続き,自律神経活動の指標である皮膚血流を導入し,情動的,社会的場面において,顔および指尖における皮膚血流について調べた.同時に脈拍などの他の自律神経指標も測定し,皮膚血流の心理・生理指標としての妥当性について調べた.詳細な検討の結果,顔面の皮膚血流については,怒りを中心とする表情観察中に,顕著に減少することが明らかになり,他の自律神経指標との比較検討により,これが5秒程度の短い時間で現れる独自な反応であることが示された.またこの反応が内受容感覚とも一致していないことを示す結果も得られた.さらに,連続血圧計を用いた自律神経動態をさまざまな観点から調べることにより,各指標で示される自律神経活動の違いについても詳細に知ることができた.本研究の結果は,自律神経活動の生理学的基盤の理解を深めるとともに,対人的・社会的な場面における生理反応が一様ではないこと,特に一部の生理反応は正常な状態に戻す方向の活動が見られることを示唆しており,この反応機序を考えると,予測的な要素も含まれている可能性が考えられる.ただし,このことを確証するためには,さらなる実験的検討が必要とされる.
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