研究課題/領域番号 |
19K21825
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
関 和彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 モデル動物開発研究部, 部長 (00226630)
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研究分担者 |
今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 運動主体感 / 意識 / サル / ラット / 誘発電位 / 筋電図 |
研究実績の概要 |
自分の意図によって行動した場合、私たちは「自分がこの行為の主体である」という感覚(運動主体感)を持つ。本研究の目的は、この「運動主体感」という心理学的現象の背景にある神経メカニズムを解明するための実験動物モデルを確立することである。実験動物を用い、運動主体感の客観的評価方法である「時間知覚ゆがみ」課題を行わせる。課題遂行中に体性感覚刺激を行い、その刺激が自己運動に帰属するという錯覚を動物に与える前後の脳活動を包括的に解析することにより、サルにおける運動主体感の責任脳領域・脳階層構造・局所回路構造を明らかにする。本年度は、ラット及びサルを対象とした技術開発研究を進展させた。ラットにおいて、技術基盤となるのは筋電図記録、神経刺激、脳波記録であるが、今年度はこれらの技術基盤のうち、特に筋電図記録方法について進展があった。つまり上肢複数筋にワイヤー電極を埋め込んで翌日に筋電図活動が無線で記録できるようになった。また、脳波記録や神経刺激を無線で行うことができるよう、テレメトリーシステムを導入した。一方サルを対象とした実験では、脳波電極の慢性埋め込み技術を確立し、数ヶ月にわたって誘発電位が記録できることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では二年間で、動物の運動主体感を計測する実験方法を確立することであった。当該目的のためには、覚醒動物の筋電図記録、神経刺激、脳波記録を慢性的に行う必要があるが、本年度はラットにおいて筋電図記録方法を確立し、またサルにおいては脳波記録方法をほぼ確立したため必要な実験技術は確立している。また、実験パラダイムについても共同研究者や国外研究者と議論を重ねている。無線記録を行いながら神経刺激を慢性的に行う方法について、検討を重ねたが、それが可能な機器が開発されたので早速導入し、ラットで機能することが確認された。従って、次年度における本実験の準備はほぼ完了した。以上により、研究の進捗は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
年度末より、Covid-19の影響を本研究も受けている。施設閉鎖などで実験ができない状況が継続されると予定通りの研究成果をあげることができない可能性もある。その場合には、比較的短時間で一頭の実験を終了できる齧歯類の実験に特化して進める、また、実験方法に熟練した研究者が手術や記録を行うなどで、ロスを減らし、できる限り短時間に実験データを取得するようにしたい。解析自体は在宅勤務でも行う体制が整っているので、短時間で生理実験を行うことに注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に予定されていた都内での研究打ち合わせがCOVID-19の影響でキャンセルになり、直前まで確保していた旅費を使用しなかったため、次年度の研究打ち合わせに使用する予定である。
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