研究課題/領域番号 |
19K21826
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉永 正彦 北海道大学, 理学研究院, 教授 (90467647)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | マグニチュード |
研究実績の概要 |
本研究は、マグニチュードホモロジーの基礎理論の整備と応用を目指すものである。2019年度は、6月に、国内でこの方面の研究を進めている五味清紀氏(信州大学)と浅尾泰彦氏(東京大学)を招いて合計3時間の講演をお願いし最近の研究の紹介をしていただいた。五味氏の講演は懸案だった円周のマグニチュードホモロジーの決定を含む成果、浅尾氏はCAT(0)空間などの概念を使った距離空間の幾何学的な観点からのマグニチュードホモロジーの研究に関する研究という重要な方向性の示唆を得た。7月にはEdinburgh大学で行われた研究集会 Magnitude 2019 へ招待講演者と出席した。本計画にある、相対マグニチュードホモロジーを weighting の圏化とみなすというプログラムを発表し、それについて Willerton 氏と議論を行った。このワークショップはマグニチュードを研究するほぼすべての数学者が集う会合で、多くの研究者と有益な情報交換が行えた。とりわけ、M. Meckes氏との会話に触発されて、本研究で中心に添えている、マグニチュード weighting を超函数として解釈するべきである、という新たな視点を得、帰国後にユークリッド空間の半空間(超平面で区切られた半分の空間)のマグニチュード weighting を記述することを目標として、計算を開始した。半空間のマグニチュード weighting をラプラシアンの 形式的冪級数として解釈できるということが計算から示唆されているが、収束性に関する問題が大きいため、未だ分析しきれてはいない。 Bremen大学のB. Nolting氏とスカイプによる議論を行った。 投稿中の論文 Magnitude homology of metric spaces and order complexes の査読レポートが送られてきたので、若干の修正後に雑誌へ再送した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画であった相対マグニチュードホモロジーを使った理論展開については、国際研究集会で口頭発表はしたものの、論文として発表するには至っていない。主な理由としては、論文として発表するほどのまとまった成果は今のところ得られていないことが挙げられる。相対マグニチュードホモロジーと weighting の関係が意味を持つのは、二点間の距離の下限がある程度大きい有限距離空間の場合のみであり、一般的な状況では「形式的な」関係しかもっていないこと根本的な原因であると考えている。このように特殊な状況でしか収束性を論じることができず、一般論としては形式的な関係にとどまっている点を克服するには本質的に新しいアイデアが必要と思われるが、現時点では解明できていない。 今年度途中から始めたマグニチュード weighting の超函数としての表示に関しては、計算結果はいくらかあるものの、超函数や偏微分方程式に関する既存の結果や枠組みでの位置づけを探ることに時間を取られていることも進展を妨げている理由である。
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今後の研究の推進方策 |
(相対)マグニチュードホモロジーがマグニチュード(weighting)の圏化とみなせるのは、多くの場合は形式的なレベルでの話であるというのが克服するべき大きな問題点であると考えている。そのために、引き続き、超函数や偏微分方程式の一般論がどこまで適用できるかを探る。また、普通の意味では発散する級数の収束を論じるBorel総和法など、発散級数の総和法のアイデアを使って、マグニチュードに関する様々な「収束性」の問題を克服する方向で研究を進める。 研究協力者の平岡裕章氏(京都大学)の周辺には、マグニチュードホモロジーに興味を持つ研究者が何人かおり、平岡氏のグループとの協力を密にとる予定である。具体的には、Web会議システムを使った議論により、最新情報の共有と研究の推進の機会としたい。他にも、応用を視野に入れ、都市工学の専門家とのミーティングを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に何件か情報収集及び研究打ち合わせのための出張を計画していたが、新型コロナウイルスの影響でキャンセルとなったため、少なくない額の繰り越しが発生した。 2020年度は(不透明ではあるが)国際研究集会を計画しており、関連する研究者が集まり、理論の大きな発展を促す場となるよう努めたい。
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