研究実績の概要 |
この申請課題では、結び目理論と空間グラフ理論を駆使し、これまで多くの成果がある立方格子内の結び目の研究を、空間グラフの研究へと発展させることを目標とし研究を行った。さらにその成果を多環状高分子の研究に応用し、複雑な構造をもつ高分子のトポロジーと物性との関連を明らかにしていくものである。 本年度は、空間グラフの最少ステップ数と最少スティック数の研究を行った。また、これまでの研究をまとめ、2022年10月にユタ大学でのアメリカ数学会スペシャルセッションにおける招待講演などにおいて成果発表を行い、研究成果の論文の執筆を進めた。 この研究課題では、頂点の次数が3の空間グラフの格子モデルに関する研究を行ってきた。同じトポロジーをもつ空間グラフの格子モデルは、BFACF移動で移り合うことを示し、空間グラフの最少ステップ数、最少スティック数の研究を行った。BFACF移動を用いたシミュレーションとして、2次元平面内の頂点の次数が3であるグラフについてBFACF移動の実装を行った。我々が導入したBFACF移動では頂点の移動も含むため、その実装は結び目の場合に比べて煩雑なものとなるが、2次元の場合については、完成している。その手法を3次元空間内の空間グラフについても拡張を行っている。この成果の応用として、多環状高分子のトポロジー、特に、トポロジーがθ曲線、四面体グラフ、K3,3グラフである場合について考察を行った。また、DNAのR-loopの数学的モデルに対し、格子θ曲線を用いた議論を行った。
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