昨年度に引き続きカンドルおよび対称空間に関する研究を行った。特に,対称空間への群作用を幾何構造に応用する研究を行い,二編の論文が出版された。一編は左不変ローレンツ計量に関するものであり,もう一遍は左不変シンプレクティック構造に関するものである。いずれの場合も,一般次元のリー群ではあるが最も基本的となるであろうクラスに対して,所定の左不変幾何構造の分類を与えたものである。その研究手法を確立したものであるという点から,今後の研究の嚆矢となるものであると考えている。これ以外にも,箙を用いた冪零ソリトンの構成,離散的な対象であるカンドルにオイラー数を定式化する研究など,いくつかの成果が得られている。これらの成果については,論文を執筆中であり,次年度に継続して遂行する。 また今年度は,コロナ禍も落ち着いてきており,様々な研究集会を対面あるいはハイブリッド形式で開催することができた。その中でも特に,9月に開催した「日中幾何学研究集会」は,3年ぶりの対面開催であり,会場となった中国・桂林には多くの参加者が集まった。また継続して開催している研究集会「カンドルと対称空間」でも,ハイブリッド形式で開催したが,例年よりも多くの研究者が対面で集まり,活発な議論を行うことができた。これらを通して,本研究課題の内容の発表に加えて,今後の進展に関する議論や,新たな研究テーマとなる話題がでるなど,多くの成果が得られたと考えている。
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