研究代表者および研究分担者の,当該年度の研究内容は以下の通りである。 日野は,ランダムな単体複体の族から構成されるランダムフィルトレーションにおけるパーシステントBetti数の定量評価の改良について,以前の共同研究者とともに検討を行った。パーシステントラプラシアンのカーネルの次元の評価について,グラフラプラシアンにおける類似の研究と本質的な相違点が存在することを認識したが,そこから派生する障害の解決までには至らず,研究は翌年度以降に持ち越しとなった。また,シェルピンスキーガスケット上の楠岡測度に付随した推移密度関数に関する局所スペクトル次元の定量評価について研究を行い,数式処理ソフト(Wolfram Mathematica 13.0)による数値計算を援用することによって,従前に知られていたものよりもはるかに精密な近似値を得た。さらに,局所スペクトル次元がハウスドルフ測度に付随した推移密度関数に関するスペクトル次元よりも値が真に小さいことを,計算機の助けによらずに証明した。この成果について研究集会で講演を行い,執筆した論文が受理された。 平岡は,ランダム方体複体上で定まるパーシステント図の大偏差原理について研究を行い,そこで得られた成果を論文としてまとめる作業を行なった(現在投稿中)。また,ランダムグラフ上で定まるマグニチュードホモロジーの確率論的性質に関する成果については論文が受理された。
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