研究課題/領域番号 |
19K21836
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
石渡 哲哉 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (50334917)
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研究分担者 |
石渡 恵美子 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 教授 (30287958)
中田 行彦 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (30741061)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 遅延微分方程式 / 解の爆発 / 周期解 / 安定性 / 解のダイナミクス |
研究実績の概要 |
1年目に引き続き、非線形遅延微分方程式の解の爆発現象と解のダイナミクスについて下記の研究を行った。 (1)2次元の時間遅れをもつ微分方程式系の爆発現象と周期解の存在性・安定性の研究を進めた。解が爆発に至るまでのより詳細な解析を行った。以上の結果の論文投稿と修正を行い、現在受理待ちである。更に、時間遅れがないケースでは、このモデルはホップ分岐により周期解が現れる典型的な構造を持っている。投稿論文では分岐が起きて周期解が出現しているパラメータ領域における解析となっているが、そうでないパラメータ領域においてもタイムラグにより解の爆発が誘導されることを示し、無限個の周期解が出現することも示した。この成果については現在論文投稿準備中である。 (2)Volterra型積分方程式の爆発現象に関する先行研究を調べ、分布型の時間遅れをもつ微分方程式の解の爆発について研究を行った。一般的な非線形性をもつ離散時間遅れの1次元微分方程式の爆発現象を、対応する常微分方程式の爆発現象と関連付け、解の爆発に対する時間遅れの寄与を部分的に明らかにした。この成果については現在論文投稿準備中である。 (3)分担者の中田は、階段型の非線形性と分布遅れをもつ微分方程式の周期解の存在や解の漸近挙動を共同研究者のGabriella Vas氏((セゲド大学、ハンガリー)と研究している。 (4)分担者の石渡恵美子は、上記の共著論文の関連研究として、差分型モデルや比例的時間遅れをもつ場合での爆発現象の可能性について検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初扱っていた問題を含む、より広い問題について、時間遅れ誘導爆発現象がみられることが分かった。また、分布型時間遅れや差分方程式へも考察が広がり、順調に研究が進展している。更に、遅延微分方程式の解の爆発現象を解析する際に関連する常微分方程式について、遅延微分方程式の解の爆発現象との関連を1次元問題ではあるが系統的に調べることができた。これは当初計画になく、この成果がより一般化できればより上位の計画以上の研究が進展していると判断できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、爆発解や周期解の存在自体については満足いく成果を得られているが、それに該当しない初期値の場合の解の挙動など、そのシステムがもつ解構造全体についてはまだまったく情報が得られていない。特に、数値計算が示唆するより広いクラスの初期関数に対する解の爆発や、接続軌道など周期解以外の有界な解の挙動などが対象として挙げられる。これらについて研究を推進する。なお、本研究メンバーを中心に、タイムラグをもつ現象の数理モデル化やその数理解析をする研究者が周辺に増えており、昨年後半からセミナーを立ち上げ、関連する研究者との交流をしている。多くの研究者と協同して、遅延微分方程式の研究を深化・拡大する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により多くの研究打合せおよび研究成果のための出張、研究者の招聘、研究集会の実施が出来なくなり、それに関連した経費が使えなくなったため経費が2021年度に繰り越された。 今年度も引き続き上記と同じような状況になることが考えられるが、オンラインでの研究集会の実施等で、そのオペレーション業者の経費等で使用する。また、論文のオープンアクセス化を進める経費として有効に活用する。
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