研究課題/領域番号 |
19K21840
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本多 史憲 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (90391268)
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研究分担者 |
青木 大 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30359541)
仲村 愛 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (30756771)
河村 直己 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光・イメージング推進室, 主幹研究員 (40393318)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 純良単結晶育成 / 圧力下物性測定 / 量子振動 / 空間反転対称性 / アクチノイド化合物 / 希土類化合物 / 価数転移 |
研究実績の概要 |
f電子を持つ希土類化合物・アクチノイド化合物は、磁気・電荷・多極子秩序、異方的超伝導など特色ある量子物性の宝庫であり、これらの量子物性の本質の解明にはフェルミ面を明らかにすることが重要となる。近年、圧力下での物性研究は、圧力誘起による量子臨界現象が注目されるなど、固体物理学においてなくてはならない技術となり、5 GPa超のバルク物性測定が盛んに行われている。一方、圧力下におけるフェルミ面の研究はまだほぼ手付かずの分野といえる。 本研究では、高圧下における3Dフェルミオロジーの手法を確立するための超小型圧力セルの設計・製作や精密な表面抵抗を観測可能なトンネルダイオード素子を用いた測定手法の開発を行ない、さらに圧力下での量子振動とその角度依存性の測定を行ない、強相関電子系物質の圧力下でのフェルミ面を明らかにしていくことを目的としている。今年度の研究実績は以下の通りである. 1.フェルミ面観測の対象となる化合物の純良単結晶育成を行なった。まずは、結晶構造に反転対称性を持たないHgSe、UIrSi3、UPt5、いくつかのEu化合物などを育成し、常圧下における量子振動測定を行ない、フェルミ面を明らかにした。 2.超小型圧力セルの設計のためにまずはそのプロトタイプとなる小型の圧力セルを使って、放射光実験を行なった。形状と発生圧力、低温にした際の圧力変化などを調べた。 3.この実験を通してフェルミ面に大きく影響するEu化合物の価数の情報をx線吸収法により高圧下、低温下において測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フェルミ面を観測するための純良単結晶育成は無事に成功しており、常圧下において、ドハース・ファンアルフェン測定、トルク測定、シュブニコフ・ドハース測定などによりいくつかの化合物のフェルミ面を明らかにすることができた。 圧力セルの設計に関しては、プロトタイプの圧力セルを用いて、加圧実験を行い、到達圧力や温度変化をした際の内部の圧力変化などを調べることができた。これらの知見を元に超小型の圧力セルの設計を行なっているが、主にサイズの面でいくつかの問題があることがわかり、小型化するための設計の工夫を行なっている。年度末に予定していた、圧力セルの製作を行う会社との打ち合わせなどが新型コロナウィルスの影響により延期となり、さらなる追加実験などもテレワークの推進により遅れが出ている。 また、トンネルダイオード(TDO)を用いた表面抵抗の測定システムについては、施設内の電気系統が原因を思われる大きなノイズがあり、十分な測定シグナルが得られていない。施設の電気系の改修は構造上困難であるためノイズ軽減策を検討しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、圧力セルの設計をできるだけ急いで行う。セルの小型化の要はダイヤの平行度調節のための球座の形状変更であると考えていたが、球座を無くし、圧力セル自体とダイヤ加工の工作精度により平行度を担保する形への設計変更を考えている。これとは別に、小型のピストンシリンダ型セルなどを用いて、まずは圧力下での量子振動測定を行っていく。 また、トンネルダイオード(TDO)を用いた表面抵抗の測定システムについては電源を安定化させる無停電電源装置(UPS)などを用いるなど、比較的安価でできるノイズ軽減策を施して早急に試験などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
超小型圧力セルの設計変更が必要となったこと、設計に関する業者との打ち合わせがコロナウィルス拡大による出張自粛などで行えなかったことで、超小型圧力セルの設計製作に遅れが生じた。またこの圧力セルのテストなどに使用する予定だった低温寒剤やルビー蛍光観察装置など付随する装置や部品の購入も遅れることとなったため次年度繰り越し額が生じた。 次年度、コロナウィルス感染対策による出張自粛などが解除されたのち早いうちに圧力セルの設計・製作を進める。またセルが出来次第上記の付随する機器等の購入を進める。
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