研究課題
異なる対称性を持ったファンデアワールス結晶ヘテロ界面における異常光電流効果(従来の半導体p-n接合を必要としない、空間反転対称性が破れた物質が固有に示すゼロバイアス下光電流効果)の研究を推進した。特に、3回対称性を有する遷移金属ダイカルコゲナイドWSe2と2回対称結晶である黒リンのヘテロ界面において発現する異常光電流効果の詳細な振る舞いを調べることにより、界面の電子状態や異常光電流効果の微視的機構に関して知見を深めた。具体的には、WSe2と黒リンの間に良質な絶縁体であるhBNを挿入した、WSe2と黒リンの並列回路と見なせるような試料を作製して、そのような構造のデバイスでは異常光電流効果が生じないことを確認した。また、黒リンの厚さによって光電流効果効果の大きさがどのように変化していくかを系統的に調べ、黒リンの厚さによらない異常光電流効果の成分があることを明らかにした。どちらの結果も、異常光電流効果がWSe2と黒リンの界面で本質的に生じており、界面におけるWSe2と黒リンの電子状態の混成が異常光電流効果発現に必須であることを明瞭に示す結果である。加えて、ヘテロ界面における異常光電流効果の照射光波長(エネルギー)依存性を測定し、異常光電流効果の微視的起源にアプローチした。中でも、WSe2の励起子共鳴近傍の波長(エネルギー)領域で異常光電流が増大する様子を観測し、2次元励起子共鳴によってファンデルワールス結晶ヘテロ界面の異常光電流効果が増大する可能性を見出した。さらに、励起子共鳴よりもさらに高エネルギーの領域において、異常光電流効果が非単調に振舞うことを発見し、光照射下での波動関数の重心シフトによる理論モデル(シフト電流機構)によって上手く説明できることを明らかにした。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
Science
巻: 372 ページ: 68-72
10.1126/science.aaz9146
Annual Review of Condensed Matter Physics
巻: 12 ページ: 201-223
10.1146/annurev-conmatphys-060220-100347
Physical Review Research
巻: 2 ページ: 023127
10.1103/PhysRevResearch.2.023127
Nano Letters
巻: 20 ページ: 4625-4630
10.1021/acs.nanolett.0c01493
巻: 2 ページ: 042046(R)
10.1103/PhysRevResearch.2.042046
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/shared/press/data/setnws_202104021333120169363733_579329.pdf