研究課題
本研究課題では、グラフェン1次元鎖(ナノリボン)に生じる「グラフェン端状態」を用いて、スピントロニクスにこれまでなかったスピンフィルタ機能の実現を目的とする。これまでの研究で、バルクのグラファイト表面に酸素、水素プラズマエッチングを施すことで、ジグザグ型の端のみを有する六角形の穴(ナノピット)を作り、六角形ナノピット間に挟まれたところは、ジグザグ端ナノリボンになることが示されていた。しかし、これを数層グラフェンで行った試みはなかったため、まずは数層グラフェンの表面に対して、六角形ナノピットが作製できる酸素、水素プラズマの条件出しを行った。六角形ナノピット自体は作製することに成功したが、この手法ではランダムにしかナノピットが作製できず、制御性良くナノリボンが得られない。そのため、電子線リソグラフィーを用いて、所望の位置だけエッチングされる工夫をした。現在保有している原子間力顕微鏡では分解能の問題で、ジグザグ端をもつグラフェンナノリボンが作製できているかを確認することはできなかった。そこで試料全体に対して電極を取り付け、磁気抵抗を測定したところ、ゼロ磁場付近に弱局在に由来するピーク構造を観測した。このピーク構造は温度の上昇とともに消滅すること、またエッチング時間が増えるほどピーク構造が鋭くなることから、弱局在効果だと断定できる。現在、上記の内容に関しては論文執筆中である。今後は、ジグザグ端をもつグラフェンナノリボンが作製できているか、高分解能原子間力顕微鏡で確認したうえで、強磁性体電極を取り付けて、スピン輸送測定を行い、端のスピン状態を電界で制御可能なスピンフィルタを創製する。グラフェンナノリボンでスピンフィルタを実現できれば、1次元フラットバンド強磁性という未だ実証されていない物性物理の基本問題に答えるだけでなく、スピン抽出という新機能をスピントロニクスデバイスに付与できる。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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