本研究では「親水面と疎水面を併せ持つ両親媒性粒子からなる粉体と液体の混合系」という新規な粉体系の創成を目指している。粉体系では、界面活性剤系でよく知られている両親媒性の効果はほとんど研究されていない。そこで実際に両親媒性粉体粒子を作成し、液体との混合系が示す構造や物性の基礎的な特徴を解明することを目指す。 2021年度はピッカリングエマルション(PE)を利用した両親媒性粉体粒子の多量作成手法を改良することができた:微粒子と水と油の混合系において、微粒子が油水界面に吸着し、油水分散状態が安定化されたものがPEである。2020年度は、PEを利用することで、多量の粉体粒子(直径が0.1mm程度のガラスビーズ)を部分的に表面処理することに成功し、即ち両親媒性化の手法を実現できた。この手法における粒子・界面活性剤・パラフィンの混合手順や手法、量を更に工夫し、5倍程度の粒子を一度に処理できるようになった。同時に粒子の吸着状態の均一化にも成功したため、各粒子の表面処理領域のばらつきも減少すると考えられる。このように、より高品質な部分的表面処理をされた粒子を、より多量に作成できるPE化の手法を実現できた。 他方、作成したPE液滴を用いた部分的表面処理に関しては再現性が悪く、しばしば粒子全体が均一に処理されてしまう現象が観察された。作成手法を以前のものに戻しても、やはり再現性が不十分であった。様々な作成手順や試料を試したが、これまでのところ原因の特定には至っていない。部分的表面処理に成功する場合もある以上、何らかの(おそらく些細な)条件が結果を分けているものと考えられる。今後も原因究明に取り組みたい。
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