研究課題/領域番号 |
19K21857
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山中 雅則 日本大学, 理工学部, 教授 (20307698)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 準位統計 / 分子動力学 / 量子化学計算 / 確率論的化学反応論 |
研究実績の概要 |
アミノ酸のエネルギー準位統計(近接および次近接のエネルギー準位間隔とその分布関数の推定)について、水媒体存在下における分子動力学法による構造のサンプリングと、密度汎関数法および非経験的第一原理法などの量子化学計算によるエネルギー準位に関する知見を得た。数年前に得ていた計算結果の確認および再現と、双極イオンなど同一分子における水溶媒中の異なるイオン状態における、エネルギー準位の検討およびエネルギー準位統計の検討を行なった。これは分子としては電気的に中性であるが、分子内の分極の状態に変化が生じ、それがエネルギー準位や準位統計へ影響を生じる可能性があるためである。さらに、電子状態から分子進化までの外挿の全体像について、化学反応におけるエネルギーポテンシャルの観点から検討を行った。従来の古典的な化学反応論において、エネルギーポテンシャルはパラメータ空間内に固定された硬い曲面であり、多くの化学反応は反応物がその鞍点を通過することで始状態から終状態へ遷移すると考えられている。このポテンシャル曲面は個々の分子の感じるポテンシャルを平均したものであり、個々の分子が実際に感じるポテンシャルは始状態および終状態の分子の立体構造に依存して様々である。また、これに量子効果が加わるとエネルギーポテンシャルのトンネリングも関係する。主としてLUMOとHOMO近傍における電子状態がこれらの化学反応には関与するが、古典的なポテンシャル曲面の概念を経由することなく、これらの量子化学的なエネルギーの準位統計と化学反応の関係を確率論的な観点から検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
同一アミノ酸あるいは同一ペプチドの水溶液中における異なる状態(非イオン化状態や双極イオンの状態等)で電子状態の詳細が異なる可能性の指摘があった。それらのエネルギー準位統計への影響についてはこれまでに研究報告がなく、この部分の差異が将来的に研究結果に少なからず影響を及ぼす可能性を否定できないために、この部分の確認作業を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、多量体の分子のモデリングと分子動力学計算によるサンプリングを行なっており、この後電子状態を計算することで、当初の計画に従った研究を迅速に実施する。今年度の知見を踏まえて、各段階において必要に応じて双極イオン等の水媒体電子状態の計算も加えることで、結果の安定性も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時には、初年度に量子化学計算統合ソフトウエアのライセンスの購入を見込んでその予算の計上を行なっていたが、2019年度の採択通知を受理する以前に学内研究費での購入を行なっていたため、重複して購入する必要がなくなったことが次年度使用額が生じた主たる理由である。このライセンスは1年単位の契約となるため、該当ソフトウエアライセンスの購入を2020年度に行う。また、新型コロナウイルスの影響で学会の口頭発表が中止となり、旅費についても次年度使用額が生じることとなった。
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