2020年度は本研究の研究対象励起粒子であるヘリウム準安定励起原子の生成に用いる高気圧ヘリウム誘電体バリア放電(DBD: Dielectric Barrier Discharge)の高度制御について実験的検討を行い,複数の研究成果を得た.これまでに報告されたDBD実験系にはない少量のガスリークを計測可能な放電ガス導入系を新たに構築することにより,ヘリウムガス中の低濃度不純物を定量的に評価した.また,不純物がヘリウム準安定励起原子の振る舞いに及ぼす影響を実験的に明らかにした.これらの進展により,従来の高気圧ヘリウムDBDでは達成不可能であった長寿命かつ高密度なヘリウム準安定励起原子生成が可能になっている. また,上記DBDにより生成したヘリウム準安定励起原子をポンピング対象粒子とした光ポンピング実験を想定して設計した2層磁気シールドボックスを製作した.これは,研究目的であるヘリウム準安定励起原子の光ポンピングを活用した高感度磁気測定と多次元密度分布計測に必須であり,研究進展の重要なステップが完了したと言える. 新型コロナウィルス感染症拡大の影響により,磁気シールドボックスをはじめ機器製作に当初予定よりも長期間を要した.また,所属専攻が異なる研究代表者と分担者が同じ実験室に長期間滞在する必要があるヘリウムDBDを用いた光ポンピング実験は2020年度中に行うことは困難であった.それぞれの研究室における要素技術開発と共同実験の準備は進んでおり,本研究の目的達成に十分近づいたと考えている.
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