X線自由電子レーザーSACLAとハイパワーレーザーシステムを結合させた、当該代表者のグループが独自に構築してきた研究プラットフォームを利用して、超高速ポンププローブ実験を中心とした研究を行った。ハイパワーレーザーをターゲットに照射することで、ダイヤモンド試料をショック圧縮し、基本ユゴニオ圧縮曲線上でのダイヤモンド構造の変化を、フェムト秒極短パルス・10 keVのXFELを用いた超高速X線回折(XRD)により直接観察した。
この実験プラットフォームでは、マルチ10 TW/cm2でのナノ秒光学レーザーの照射エネルギー密度が実現可能となった。約5ナノ秒のレーザーパルスを150ミクロン直径程度のスポットに照射して、ナノ多結晶状態のダイヤモンドのショック圧縮状態を生成した。生成した状態における圧力温度は独自に構築している速度干渉計などからなる独立の光学計測系(VISAR/SOP)による独立の観測結果から推定した。VISAR/SOPと連動してジオメトリを変化させられる大面積X線検出器のシステムにより、2θ回折角10°-80°までの広角を一度にカバーしたフェムト秒露光シングルショットXRDパターンを取得した。試料には、西山(東工大、分担)らが確立してきた我が国独自のナノ多結晶合成技術によって生成された高透光性ナノ多結晶ダイヤモンドを使用した。これにより高品質のXRDパターンの検出が可能となるとともに、その高透光性から光学特性の観察も同時に行うことができた。ナノ多結晶ダイヤ試料の利用により、高品質なでバイシェラーパターンが取得でき、母相ダイヤモンド構造のピークとは明瞭に分離されたピークの分析が可能であった。
高速大変形時の弾塑性転移過程、ナノ多結晶の粒界効果による弾性限界強度、ダイヤモンド結晶状態の安定領域を解明・実証することに成功した。
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