研究課題/領域番号 |
19K21869
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
室賀 健夫 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (60174322)
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研究分担者 |
浜地 志憲 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (60761070)
能登 裕之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (50733739)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | プラズマ対向機器 / 高熱負荷試験 / 高温静水圧プレス / 再生利用 |
研究実績の概要 |
本研究は、核融合炉における放射性廃棄物の排出を大幅に低減する目的で、最も頻繁に交換が必要な「ダイバータ」という受熱機器の、機能再生、再利用の見通しを明らかにすることを目的とする。熱負荷の結果形成した亀裂によって熱除去能力の劣化したダイバータの回復、再生利用の見通しを得るため、試験体の設計製作、熱負荷試験と試験による除熱特性劣化の評価、加圧再生用の高温静水圧プレス(HIP)試験手法の開発、などを行う計画である。 これまでに、低放射化フェライト鋼(JLF-1)とタングステン(W)をロウ付によって接合した平板試験体を、中間材なし、純鉄中間材、純銅中間材の条件で製作した。中間材なし、純鉄中間材の試験体では接合界面に平行な亀裂が見られたものの、純銅中間材を用いることで健全な接合が得られることが分かった。接合材の性能評価について、さらなる高熱負荷での熱負荷試験を目的として、試料ホルダの再設計・製作を行った。この試料ホルダでは、ヒートシンク部の水冷による直接冷却とし、試料固定に高温特性の良い皿ばねを利用して各部の熱膨張による試料の固定圧の変化を抑制する構造を実現した。 さらなる接合体の高度化を目指し、中間材の種類をGLIDCOP(耐照射性能を兼ね備えた高強度銅)に変更し再製作したところ、接合後の冷却段階にて亀裂が発生した。これは先行研究からも明らかなように熱応力によるものと考えられる。観察の結果、この亀裂は、プラズマ対向材料タングステンの表面に向かって開放する形状を取っており、熱間等方加圧による修復には、解放端を埋めることによる「閉鎖系」の形成が必要であると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、初年度は、1.HIP再生処理が可能な形状の、接合界面を含むダイバータ試験体の設計、試作を行う。2.繰り返し熱負荷試験による試験体の熱除去機能の劣化の評価を進め、疲労損傷の進展過程とその効果を明らかにする。であり、2年目は、3.ダイバータ試験体のHIP 再生処理法の開発を進める。4.損傷試験体のHIP再生処理を実施する。であった。これまでに、1.については、対象とするWと低放射化フェライト鋼(JLF-1)の接合試験体開発を進め、純銅中間材を用いることで良好な接合が可能であることを明らかした。これをベースに試験体製作を進めた。2.については、実規模熱負荷試験に必要な実験環境整備に取り組み、高熱負荷試験装置(ACT2)の改良により、サイクル熱負荷試験を実施し、亀裂による除熱特性劣化を検出した。3.については、HIP 再生処理技術開発の一環としてのキャプセル開発と利用も進める事が出来た。 4.のHIP再生処理については、次年度に持ち越しとなったが、その代わり、(a)熱負荷試験での試料ホルダの設計変更により、これまでよりも高熱負荷での安定した熱負荷試験環境を整備した。これにより、比較的簡便に製作可能な平板接合試料で、これまでより高い熱負荷(6 MW/m2以上)での、熱負荷特性評価が実現できるようになった。また、(b)より耐照射性に優れた銅合金(GLIDCOP)を用いた接合体の熱負荷試験の結果、発生した亀裂は、プラズマ対向材料タングステンの表面に向かって開放する形状を取っており、熱間等方加圧による修復には、「閉鎖系」の形成が必要であることが明らかになった。これら(a)(b)の高度化の達成、新しい知見の獲得を考案すると、当初の計画相当に進展したと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、改良した熱負荷試験環境で、健全な接合試料や、亀裂形成後回復処理を行った試料に対して高サイクル熱負荷試験を行い、回復処理後の接合材の性能の評価などを進める。 HIP亀裂修復試験においては、熱間等方加圧用のカプセルに匹敵し、且つコンポーネントを傷つけることなく除去できる閉鎖系を探索している。その一つとして、プラズマ対向材料と同じタングステンメッキの利用を検討している。このメッキを亀裂の閉鎖系として使用することにより、熱間等方加圧によるガスの流入を止め、メッキごと亀裂を埋めることができると期待している。このような新技術開発とその適用性評価により、本計画の当初目的に対応する成果を得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議が延期になり、研究成果発表を改めて次年度に行うことを予定している。発表2件を次年度追加する計画である。
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