本研究の目的は、ミリ波望遠鏡の検出器アレイにおける光子の強度相関 (Hanbury-Brown & Twiss効果) を理論・実験の両面から研究する事である。次世代宇宙マイクロ波背景放射(CMB)観測実験であるSimons ObservatoryやCMB-S4実験は、数万から数十万の検出器を擁するミリ波電波望遠鏡群であり、その焦点面に検出器が高密度に配置される。我々は、このような実験で光子がボーズ統計に従うことによる強度相関が無視できず、また、従来CMB望遠鏡の設計においてこの効果が正しく見積もられてこなかった事を指摘した。本研究においては、この効果の大きさを理論的な側面から、特に偏光に注目して算定し、CMB用の検出器を用いた測定により実験的に検証することを目指している。そして、この成果から得た新しい示唆をもって、次世代CMB実験の設計に改良を加える。 3年度目においては、理論計算と、実験的測定のための光学測定を進めた。理論計算部分は、最終稿を仕上げる段階に至った。実験的測定を行うためのセットアップとしては、低温黒体光源を用いた超伝導検出器の試験を進め、希釈冷凍機中で光源に対する応答の確認を進めた。
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