研究課題/領域番号 |
19K21879
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
吉見 彰洋 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (40333314)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | Th-229 / アイソマー |
研究実績の概要 |
今年度は本研究で使用する真空紫外光に透明な結晶の候補の中で、 CaF2 結晶にトリウム-229をドープした Th229:CaF2 を用いて8eV超低励起アイソマー準位からの脱励起光の探索実験を行った。この脱励起光は 150 nm 周辺の真空紫外光が期待され、この光を検出・分光することでアイソマー準位のエネルギーや寿命を決定することが可能になる。Th-229 のアイソマー準位に遷移させるために、現在 SPring-8 の 29 keV 放射光を照射して第2励起状態への励起を行っており、29 keV からの脱励起光強度がピークになる放射光エネルギーに固定することで、確実にアイソマー準位に遷移されることになる。今年の実験ではアイソマー準位の寿命は予想される30分を仮定して、30分間放射光を 229Th:CaF2 に照射して放射光入射を止めた後、30分間脱励起真空紫外光の検出を行った。バックグランド光を抑制するために、放射光照射と真空紫外光検出は真空チェンバーを分けて、モーターで各場所に行き来するシステムを構築した。また検出光の波長を識別できるように光電子増倍管の前に真空紫外領域のバンドバスフィルターも用いた。放射光の波長を励起点に合わせた場合と十分はずした場合で真空紫外光子の計数差の観測を行い、その信号計数率が 0.3 Hz 程度であれば検出できるシステムを構築できた。なお、今の実験パラメータで期待される信号計数率は不確定性はあるが、 0.1 Hz 程度である。現段階では未だ有意な信号は得られていないが、次年度にシステムに改善を施す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
229Th 凝固試料で正確な第2励起状態への遷移波長を決めた上で、229Th:CaF2 結晶での放射光励起を実現させる系を構築でき、実際に真空紫外光探索実験を実施できる段階に至ったので。
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今後の研究の推進方策 |
現在バックグランドに比べて有意な真空紫外光信号が検出されていないので、この検出を目指すため、(i) ドープ密度を上げた 229Th:CaF2 結晶の用意 (ii) ドープ密度が多くより燐光が弱いと期待される 229Th:LiSrAlF6 結晶の用意 (iii) 光電子増倍管の代わりに真空紫外分光器を用いて信号雑音比が向上するかの試験を行う、の方向で研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に物理学会等の出張を予定していたが、新型コロナ感染症の関係で出張がすべてキャンセルになったため、次年度に出張および消耗品購入のために使用する予定である。
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