研究課題/領域番号 |
19K21880
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
本間 謙輔 広島大学, 理学研究科, 助教 (40304399)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 暗黒エネルギー / ディラトン / GHz帯域 / 誘導共鳴散乱 |
研究実績の概要 |
宇宙の加速膨張の説明には、斥力を生み出すエネルギー源が必要となる。その源は未解明なため暗黒エネルギー(DE)と称される。DEの正体解明は究極の基礎物理学的課題である。DE源の1つの候補として、スカラー型素粒子dilatonの介在が考えられる。dilatonは時空計量の伸縮に対する対称性の自発的破れに伴う南部-ゴールドストーンボゾンであり、その質量は0.1μeVと軽く、かつ、光子を含む物質場とは重力的に結合する粒子である。本研究の究極の目標はGHz帯光子を用いた誘導共鳴散乱実験によるdilatonの地上探索である。本申請内の目標は、以下2つの要素研究 1) 2色のGHz帯光子群を混合後、自由空間に取り出して集光する、準平行衝突系実装の試み、2) 誘導共鳴散乱の信号光となるGHz帯の単一光子に感度をもち、かつ、その個数を計数する超伝導センサーの設計・試作、を通じて研究構想の実現性を検証することにある。
要素1について) 準平行衝突系に特化したGHz帯光学系の概念設計を実施した。その内容はarXiv:1909.00983 [hep-ex]へ投稿し、現在査読中である。GHz光源とホーンアンテナを購入し、集光用のパラボラアンテナについては、その焦点距離が可変にできるような簡易な集光アンテナを試作し、集光特性を調査する段階に達した。
要素2について) 協力研究者の指導のもと理研にて100 GHz帯域の超電導検出器キットを実際に製作し、その作業を通じてセンサーを製作する上での具体的にな問題点を見出した。加えて、GHz帯域の単一光子検出に成功している産総研の研究者と交流し、彼らのセンサー設計を本研究計画に応用することは原理的には可能であるが、検出器入り口からセンサーまでの導波路上の熱ノイズの制御が肝となることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画したことには挑戦できた。しかし、特に要素1)に関して、パラボラの集光特性を測る段階で、実験場の制約からくるノイズ成分のため集光特性を見極めることに難航している。2020年度には、適切な実験場に場所を移す必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
要素1)に関して、簡易な光学系とはいえ、実際に試作と実験を繰り返すと実験場の制約のため膨大な時間を取られてしまう。今年度は、パラボラを含む光学系全体の詳細設計をHFSSシュミュレータ上で行い、無駄なトライアルを減らし、最終光学系のみを、適切な実験場で組むことにする。要素2)に関して、2020年度はコロナウィルス蔓延の影響があり、広島大学から関東地方の研究所へ出張することが難しく、センサーの試作はほとんど進捗しないことが見込まれる。しかし、少なくとも要素1)を進め、GHz帯域の初期探索を広島郊外で実施できるよう努力する。
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