宇宙の加速膨張を説明するには、斥力を生み出すエネルギー源が必要となる。そのエネルギー源の実態は未解明なため暗黒エネルギー(DE)と称される。DEが宇宙に占める割合は7割と大きく、その正体解明は究極の基礎物理学的課題である。DE源の1つの候補として、未知のスカラー型素粒子dilatonの介在が考えられる。dilatonは時空計量の伸縮(dilatation)、つまり、スケール変換に対する対称性の自発的破れに伴う南部-ゴールドストーンボゾンであり、その質量は1つの理論模型によれば10^-7 eV程度と極めて軽く、かつ、光子を含む物質場とは重力的に結合する粒子である。本研究の究極の目標はGHz帯光子を用いた誘導共鳴散乱実験によるdilatonの地上探索である。この目標に向けた本研究の目的は、その実現可能性を定量的に評価することであった。この目的に従い、探索系の基本設計を実施し、その青写真を論文として出版した。さらに、重力的弱結合領域に踏み込める本手法が革新的であることを確信し、この出版に関する記者会見を実施した。本研究の1つ目の要素課題として、GHz帯域電磁波の自由空間における集光系の実現があった。これに関しては、電磁波シミュレーターを導入し集光系を設計した。その上で、実際に異なる2つのGHz帯域の連続光を混合後、1つのパラボラで大気中で集光し、誘導共鳴散乱の信号として周波数シフトした電磁波を探索するプロトタイプ探索系を試作し、試験的探索を実施した。この試みについては日本物理学会にて公表した。2つ目の要素課題として掲げたGHz帯単一光子検出手法に関しては、様々な検出技術をレヴューした後に、国内の研究者が開発した超伝導フラックス型量子ビット素子を用いたΛ型三準位による単一GHz帯光子計数系を、ナノ秒ゲートで制御可能なパラメータ領域で製作すれば、原理的に実現可能であることを見出せた。
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