研究課題/領域番号 |
19K21884
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野田 博文 大阪大学, 理学研究科, 助教 (50725900)
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研究分担者 |
林 佑 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (00846842)
武井 大 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 客員研究員 (10709372)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | X線干渉計 / 超電導遷移端型X線マイクロカロリメータ / マイクロマシニング / X線天文学 / ブラックホール / 活動銀河核 |
研究実績の概要 |
本研究では、1台の衛星で実現できる高空間分解能のX線干渉計を目指し、高精度でX線光子の入射位置を特定できる極低温センサーの開発を行っている。2個のセンサーの間のパルスの立ち上がりの時間差を用いて、X線光子の入射位置を特定できる新しい原理の素子を考案し、TiおよびAu薄膜でできた~100 um四方の超電導遷移端(TES)センサー2個を~1 mmの間隔をあけて配置し、その間に長さ~1 mm、幅~20 um、厚さ~1 umのAu吸収体を取り付ける形で、素子のデザインを行った。 まず、数値シミュレーションでこのデザインの検証を行うため、素子の熱数学モデルを構築し、有限要素法を用いてX線光子が吸収体に入射した後の熱拡散を計算することで、入射位置によって2個のTESセンサーのパルスに異なる時間差が生じることを確認した。デザインの検証ができたため、次に、首都大学東京(現・東京都立大学)および宇宙科学研究所のクリーンルームにて、マイクロマシニング技術を用いてこの素子の製作を行った。現在、冷凍機を用いてセンサーを極低温まで冷却した上で、線源を用いてX線を照射する実験の準備を進めている。さらに、放射光施設にてX線マイクロカロリメータを用いる実験に参加し、ビーム環境下で極低温センサーを長時間冷却し、安定に駆動させることができるか検証を進めた。また、活動銀河核の構造に関連する研究会に参加し、巨大ブラックホールやその周辺の様々な構造のX線干渉計による空間分解に向けて、本研究で開発する素子に求められる光子の入射位置の特定精度の検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、超電導遷移端型X線マイクロカロリメータを応用して素子のデザインを行い、シミュレーションによる設計の検証ののち、素子の製作まで進めることができた。また、放射光施設でX線マイクロカロリメータを駆動する実験に参加でき、現在製作している素子を放射光施設で駆動させる実験の参考となる結果が得られた。こちらも当初の予定通り問題なく進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
製作した素子を冷凍機を用いて極低温まで冷却し、2個のTESセンサーがともに超電導転移するかどうかを確認する。転移が確認できたら、55Fe線源を用いてX線照射実験を行い、1つのX線入射イベントに対して2個のTESセンサーそれぞれでパルスが得られるかを調べる。複数のX線入射イベントに対して、2つのTESセンサーのパルスの立ち上がり時間を調べ、両者の間の時間差を定量化する。次に、光子の入射位置を制限するために線源と素子の間に設置するコリメータを製作し、X線照射実験から、光子入射位置と時間差の対応を調べる。並行して、放射光施設でこのセンサーを駆動し、X線干渉縞を検出する実験の計画を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に複数予定していた宇宙科学研究所などでの実験や研究会参加のための出張が、コロナウイルスの影響によって全て中止および延期されたため。宇宙科学研究所での実験を2020年度に行うこととし、その出張費や実験に必要な物品の購入に充てる予定である。
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