研究課題/領域番号 |
19K21886
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
前田 良知 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (80342624)
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研究分担者 |
坪井 陽子 中央大学, 理工学部, 教授 (70349223)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | X線望遠鏡 / 分光 / 偏光 / 撮像 |
研究実績の概要 |
偏光・分光・撮像の3大観測能力を高いレベルで備えた新しいX線望遠鏡の実証にむけて、像再構成を担うスリット(ARB)の開発、ソフトウエアの開発、望遠鏡 部の開発の3つにわけて進めている。 ARB部はBLで通常用いられているスリット製作技術が必要である。当研究では加工機のパラメーター出しを行い、スリット加工技術を獲得した。金の電柱レプリカの技術を用い、μmの精度でスリットを作成できている。金の内部応力により、加工条件にかかわらずスリット全体が縮むこともわかった。確実に技術レベル を向上させている。 像再合成のためのスリット応答行列の測定は、Astro-H の望遠鏡のキャリブレーション技術を適用した。実測とモデルの見分けがつかない精度の技術レベルをすでに獲得済みである。この測定に技術をそのまま踏襲した。像再合成は、この望遠鏡の成功の鍵を握る技術であり、本年度ソフトウエアの改良も行った。ポワソン限界にあるデータの場合は、Richardson-Lucy 法が一般的には有力である。これに天体の分布の情報(スパースネスや拡散度)を加味することで、より正確な 像再合成を実現する手法を開発している。 集光望遠鏡部の製作であるが、一昨年に引き続き、昨年度は新型コロナウイルスの蔓延防止政策に伴う実験室の立ち入りが強く制限されてしまったため、今年度改良版の作成を行う。作成の段階で、実験室内で偏光性能を簡便に測定出来るように、中央大学で偏光測定環境の開発も進められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スリット部の開発、ソフトの開発は順調に進んだ。 スリットは一昨年度に作成したものをX線ビームラインで測定し、スリットパターンの再構成から数秒角の精度で解像できることを実証した。 ソフトウエアは、バックグランドを像再構成ルーチンに取り込む改修を行い、実際にプログラムを走らせて取り込めることを確認した。あまりにバックグランド が高い場合は、統計学的に像再構成ができないこともわかり、今後のハードウエア設計への重要な知見を獲得している。 望遠鏡部の開発をインハウスで行う中央大学が東京都文京区にあるため、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の煽りをうけ、実験室への入構制限の影響を強く受けて、開発・製作が思うようにすすめられなかった。本年度予定していた開発が半年から1年のスケールで遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
2020,2021年度開発予定であった、感度域を広げた望遠鏡の開発を2022年度に渡って進める。2022年度中に望遠鏡単体での測定を行い、感度帯の検証を行う。このデータでエネルギー分解能の確認も行う。 解像を担うスリットの像再構成部はソフトウエアの再構成アルゴリズムの改良を行い、再構成の再現精度の検証を続ける。 単体での開発の精度の向上を進め、X線測定による実証を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延防止策に伴い、開発、つまり予算執行が遅延したため。 2021年度に執行予定であった望遠鏡の材料調達および測定のための治具等の購入を2022年度に行う。また、2021年度に予定していた成果発表も2022年度に行う。
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