研究課題/領域番号 |
19K21889
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
奥村 聡 東北大学, 理学研究科, 准教授 (40532213)
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研究分担者 |
坂巻 竜也 東北大学, 理学研究科, 助教 (30630769)
上杉 健太朗 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光・イメージング推進室, 主席研究員 (80344399)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | マグマ / 破壊 / 差応力 / 時間分割X線回折 / ミリ秒観察 |
研究実績の概要 |
マグマは岩石が熔融してできた液体であるが,火山噴火過程においては早い変形を受け液体から固体へと変化する.この液体から固体への変化は様々な物質で観察されるが,これらの変化がなぜ発生するのか,その微視的原因は未解明である.本研究では実験システムを独自に構築し,放射光X線を利用することでミリ秒スケールという高時間分解能での時間分割X線回折(XRD)・小角散乱(SAXS)実験を行い,固体へと変化するマグマの微視的構造変化を明らかにすることを目標としている.本年度は,X線吸収係数の小さな窒化ボロンとカートリッジヒーターを利用した加熱炉を作成し,SPring-8でメルトの引張実験を行った.初めの実験では,マグマの模擬物質として酸化ゲルマニウムメルトとソーダライムメルトの引張試験を600-650℃の範囲で行った.引張速度は100um/秒である.また,引張試験中,100ミリ秒ごとにメルトのXRDを行うことで構造変化を調べた.その結果,ソーダライムメルトは変形中もXRDパターンに変化が無く,XRDで観察される構造に変化が無いということが分かった.酸化ゲルマニウムについてはデータ解析中である.2回目の実験では,XRDと同時にSAXSを行うための実験システム構築を行った.XRD用の検出器を試料から200㎜程度の位置に設置し,SAXS用の検出器は3m程度の位置に設置した.酸化ゲルマニウムメルトとソーダライムメルトの引張試験中にXRDとSAXSを同時取得した.XRDの撮影は1回目と同様に成功した.SAXSのデータについては、解析方法を含めて検討中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
期間全体を通して構築する予定であった実験システムを初年度で構築することができた.これによって実験構築後に開始する予定であったメルトの引張試験を初年度から開始することができた.その結果ソーダライムメルトに対するマクロなレオロジーと微細構造の関係を世界で初めて実験的に示すことに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
実験システムを初年度で構築でき,その結果幾つかの実験データを取得することができた.一方で,現在,コロナウイルス感染が広がっており今年度予定していたSPring-8での実験が可能か不明である.今後はSAXS実験と実際のマグマを用いた実験を予定していたが,もし実験を行えない場合には既に得られている実験データを解析し,論文化することに注力する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新しい実験システム構築のために購入予定であった電気炉・検出器の部品が,代用品で対応できたため残額は次年度使用とした.SAXS実験用の部品購入等にあてることとする。
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