研究実績の概要 |
マグマは岩石が熔融してできた液体であるが,火山噴火過程においては早い変形を受け液体から固体へと変化する.この液体から固体への変化は様々な物質で観察されるが,これらの変化がなぜ発生するのか,その微視的原因は未解明である.本研究では実験システムを独自に構築し,放射光X線を利用することでミリ秒スケールという高時間分解能での時間分割X線回折(XRD)・小角散乱(SAXS)実験を行い,固体へと変化するマグマの微視的構造変化を明らかにすることを目標としている.本年度はコロナ感染拡大の影響でSPring-8前期の実験は延期になった.その間,SAXS解析方法について検討を進めた.後期のSPring-8での実験は,昨年度から継続しているソーダライムメルト、ゲルマニウムメルトに加えて安山岩メルトの引張試験(780-820℃,引張速度100um/秒,観察100ミリ秒)を行った.その結果,メルトが破壊へ至る過程において、XRDに大きな変化が無いことが確認された.一方で、安山岩メルトの実験では結晶化過程をSAXSで観察できることが見出された.さらにこの結晶化はマグマを固体的、つまり破壊しやすくすることが示された.液体のメルトが固体へ遷移し破壊へ至る過程の全貌は未だ明らかでないが、本研究によって(1)破壊へ至る過程においてもメルトを構成する個々の原子間距離程度の構造は変化しないこと、(2)数nm程度の結晶の晶出が破壊を誘発しえる、ことが見出された.本研究で確立した実験システムについては国際誌(Okumura et al., 2020, RSI)で報告した.
|