研究課題/領域番号 |
19K21896
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
安江 健一 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 准教授 (10446461)
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研究分担者 |
丹羽 正和 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究主幹 (90421685)
川崎 一雄 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 准教授 (60624806)
横山 立憲 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究職 (10750846)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 水和層 / 二次磁化 / U-Pb年代 / 古地磁気 / 土岐砂礫層 / 呉羽山礫層 / 更別層 |
研究実績の概要 |
本研究は、礫層中の礫に形成された水和層の厚さと二次磁化の獲得温度、礫層中の砂・粘土のU-Pb年代と古地磁気方位から得られる年代値を複合した礫層の堆積年代測定法の構築を試みる。当該年度は、岐阜県南東部に分布する数十万~数百万年前に堆積した土岐砂礫層等の堆積物を用いて分析を行なった。 二次イオン質量分析法により溶結凝灰岩礫に含まれる石英粒子とチャート礫の表面の水和層の深さを測定した。測定結果を用いて、拡散係数と時間をパラメータとした相補誤差関数でフィッティングしたところ、値は想定される年代値より1オーダほど若く計算された。石英表面の凹凸の影響や礫の種類を踏まえて、フィッティングを検討する必要がある。 溶結凝灰岩礫とチャート礫の自然残留磁化測定と段階交流消磁を行った。6試料中3試料において2つの磁化成分が認められ、残りの3試料は安定な磁化成分は認められなかった。2つの磁化成分が認められた試料については、段階的に熱消磁して低保磁力成分を同定し、二次磁化から初生磁化に変わる温度を把握することが可能である。 砂層に含まれるジルコンのU-Pb年代値には大きなばらつきが認められた。このことは、複数の起源のジルコンを含んでいることを示唆する。これらの中で若い年代値が重要となることから、測定数を増やして可能な限り若いジルコンを見つける必要がある。また、粒子の形状から砕屑粒子とテフラ粒子を識別することで、効率的に測定できる可能性がある。 7ccプラスチックキューブを用いて採取した粘土試料の自然残留磁化測定と段階交流消磁を行った。粘土試料は磁化強度が弱く、段階交流消磁で安定な固有磁化成分を同定することが困難であったが、高磁場段階で伏角がマイナスを示す試料を見つけることができた。 さらに、他の礫層での研究に向けて、富山県中部~東部に分布する呉羽山礫層の観察、北海道北部に分布する更別層の情報整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、4つの手法から得られる年代値を複合して、礫層の堆積年代測定法の構築を試みる。4つの手法と測定試料について、現在は以下の状況であり、本研究はおおむね順調に進展している。 礫表面の水和層の厚さの測定による年代値は、実際の値より1オーダほど若く計算されたが、礫に含まれる石英表面の水和層の厚さを二次イオン質量分析法により測定することができ、今後の課題が明確となった。 風化礫の二次磁化の獲得温度の測定では、2つの磁化成分を持つ試料の存在を確認でき、二次磁化から初生磁化に変わる温度を把握できる見込みが得られた。 ジルコンのU-Pb年代測定では、複数の起源のジルコンから可能な限り若いジルコンを抽出するために、粒子の形状に着目することで効率的に測定できる見通しが立った。 古地磁気測定では、粘土試料の磁化強度が弱かったが、堆積年代を決定する上で重要となる試料が見つかり、今後の測定方法を検討することができた。 さらに、当該年度は岐阜県南東部に分布する土岐砂礫層を分析に用いたが、富山県中部に分布する呉羽山礫層についてテフラ層から堆積年代が明らかな露頭を観察し、翌年度以降の試料採取地点を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
礫表面の水和層の厚さの測定では、二次イオン質量分析法による測定数を増やすとともに、石英表面から0.1~0.3マイクロメートルという極浅部の凹凸の影響や礫の種類を踏まえてフィッティングを検討する。 風化礫の二次磁化の獲得温度の測定では、2つの磁化成分をもつ試料を段階的に熱消磁して二次磁化から初生磁化に変わる温度を明らかにする。また、測定数を増やして礫種の違いや風化の程度の違いによる影響を把握する。 ジルコンのU-Pb年代測定では、測定数を増やして可能な限り若いジルコンを抽出するが、その際に粒子の形状を考慮して測定することで効率的に測定できる可能性も合わせて検討する。 古地磁気測定では、風化の影響等から磁化強度が弱い試料が多いと考えらえることから、試料を増やしてデータの信頼性を向上させるとともに、高精度の超伝導磁力計を用いた測定を試みる。 以上の各手法における課題に取り組み、複合して得られた年代値の妥当性をテフラ等から分かる年代値と比較して評価する。また、他地域の礫層も用いて、手法の有用性や高度化を模索しながら効果的な測定法を構築する。本手法が構築できれば、数十万~数百万年前の礫層の堆積年代をこれまでより精確に決定することが可能となり、日本のような変動帯の地形・地質現象の詳細な解明に貢献できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、試料採取や測定の方法を確認しながら実施したことから、測定試料数が少なく測定に使う消耗品が予定より少なく済んだ。当該年度に試料採取や測定の方法が検討できたことから、次年度以降は測定数が増えることが想定され、使用額も多くなる計画である。 当該年度に研究者の異動等に伴い使用する装置が変更可能となり、本研究を進める上でより良い環境となった。それを踏まえて、測定方法や導入する器材を再検討し、次年度に適切な機材を導入する計画とした。
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