近年になって、雷雲や雷放電から20 MeVに達するガンマ線が放射される事実が確立した。身近な雷雲中に天然の静電場粒子加速器が存在する大変興味深い事実を示すが、加速のメカニズムは定性的にしか分かっていない。軌道上の人工衛星から地球由来の突発ガンマ線がよく観測されるが、その光度と距離を考えると、雷雲中での放射線量は非常に大きなものとなる。サイエンスとして興味深いだけでなく、航空機への被曝にも注意を要する。しかし、観測装置が容易に飽和するほど大強度で、観測は非常に難しい。本研究では、我々が進めてきた衛星搭載のガンマ線検出技術、地上での雷ガンマ線観測の12年にわたる実績に基づき、あらたにチェレンコフ光観測の技術を持ち込んで、TGFから10-20 MeVの高エネルギーガンマ線を捉え、その強度と到来方向を知る観測装置を開発する。航空機などにも搭載できるコンパクトな設計で実現することが目的である。 屈折率のある物質中をその光速より速く動く荷電粒子はチェレンコフ光を発するが、これは粒子の進行方向に指向性を持つ。本計画ではアクリルの内部でチェレンコフ光を発生させ、その両端に光検出器を設置してその光量比を用いて指向性を得る。2chの光センサーとアクリルをで構成される検出部を 5x5x6 cm3 に納め、10x10x7 cm3に収まる回路部で読み出し、消費電力4Wという、「軽量小型低消費電力」なチェレンコフ観測装置を製作した。まずは宇宙線ミューオンを多様な角度で実測することで、確かに指向性を持つことを確認し、「指向性を持つコンパクトなチェレンコフ検出器」を実証した。本来次のステップとして10 MeVのガンマ線ビーム照射を目指していたものの、逆コンプトンガンマ線の照射施設の閉鎖もありまだ実測に至っていない。将来的に中性子捕獲ガンマ線の照射などの代替手段を検討をしている。
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